コンテナ市況レポート 2011年8月

  • by 中尾 治美

小生が住んでいる横浜では8月に入ると一斉に蝉が泣き始める。その鳴き声が一層夏の暑さを増幅させる。蝉の声は夏の象徴である。小生の生まれ育った長崎の田舎町では7月初め頃には蝉の声を聞き、子供心に、来る夏休みに心躍らせたものである。蝉は幼虫として約3~17年地下生活した後、成虫で長くて1カ月の命を終える。彼らのあわただしい鳴き声は、地上での短い生命を一生懸命に生きようとしているように思われ、子供心にも自然の生き物の摂理を感じたものである。

8月15日は終戦の日である。今年で66回目。66年前の8月6日に広島、3日後、8月9日に長崎に原爆が投下された。広島、長崎でそれぞれ20万人、10万人以上の尊い人間の命が一瞬に奪われた。小生は戦争体験を知らない世代であるが、暑い夏、蝉の声を聞くと小生の心の片隅に何時も戦争の悲惨な気持が湧き上がってくる。日本人が人類初めて、原子爆弾を経験した国民である事は事実である。8月はお盆の時期に当たる。先祖を供養するためにいろいろな飾りをし、料理を用意して祖先を各家庭で迎え、また送り返すのである。そのためにお墓の掃除も欠かせない。都会の人の大部分が地方出身のためこの時期に自分の生まれ故郷に戻り、お盆を親兄弟と祝う、そのため企業も8月15日前後をお盆休みすることが慣例になっている。この時期は日本中、帰省客で交通機関が大渋滞になる。離れ離れの家族、同郷の知人が最低1年に1度顔を合わせる大切な時期でもある。 我々第一代団塊世代の戦争に対する感覚は、戦争体験世代である両親、親族及び地域の行事(盆踊り等)を通して、戦争経験世代の話を聞いて育ち、自然に感覚的に身に付けて来たものである。 

小生の経験から言っても戦争体験世代から聞いた話で、戦争の悲惨さ、2度と戦争すべきでないと言う反省の弁を聞いたが、不思議と欧米に対する憎悪、怨念の気持は少ない。その後、世界に追い付け追い越せの掛け声の中で育った世代としては、焼け野原となった日本を世界第2番目のGDP大国にした戦争体験世代の生命力、行動力、先見性に感謝するばかりである。我々戦争体験を知らない第一代団塊世代としてはこの戦争体験世代の感覚を、次の戦争を知らない世代に正しく伝えて行くこが我々の使命である。そのためにも日本人は世界に出て、この貴重な経験を世界の人と共有する必要があると考える。それが現在の我々日本人に課された一つの使命であると思う。生命の尊さ、平和の大切さ、共に生きると言うことを世界の人に伝えるのは、日本人であるがゆえに、日本人だからできることがあるように思う。

この円高は良い機会である。最高の円高水準、為替レイト、$1.00=¥76は日本人の肩を押してくれているのである。日本人の内向き、引き籠りは世界にとってマイナスである。自信を持って世界に出て行こう、世界中の人は日本人が出て来るのを待っている。個人も企業も。一度の失敗に恐れず、懲りず二度三度と挑戦すると物事は何とか先が見えて来るものである。

8月5日、スタンダード・アンド・プアース社により米国の国債が国債史上初めて最上位の格付けAAAからAA+に格下げになった。欧州もギリシャの債務問題及びイタリア、スペインの財政不安を抱えており、世界経済は世界的株安で金融危機の可能性も出て来た。

中国の工場在庫も先月末の50万TEUから80万TEUに増えている。その結果新造価格も $2,400 per 20fの価格が出ているようである。一部の工場は既に生産をストップし、価格下落に対処しようとしていると聞いている。リース会社は既に注文を止め様子見体制である。新造のコンテナ価格は鋼材の値上がり、人件費の高騰の中で、安値を探っているところであろう。中国のコンテナメーカーにとっては船会社からの発注がカギとなる。船会社も長期リースの返却を始め、それを自社の新造コンテナと入れ替え、フリートの新旧代替を始めている。一方、リース会社は返却されたコンテナをできるだけ早く売却しようとしているため、リース会社の稼働率は今も96~98%と高めである。船会社は今年の9月、10月のコンテナ需要期は大きな混乱もなく乗り切ることができるのではないであろうか?中古コンテナ市場はコンテナが多少出てきやすくなるが、値段的に大幅な値崩れは無いと考える。8月1日に87万TEUを運用する世界第5位のリース会社であるGE CeaCoが中国の海南航空集団とBravia Capital(米国)に10.5億ドル(約807億円)で売却された。今後の動きが楽しみである。

7月19日から28日までの10日間、休暇を取って念願のベルギー, オランダを重点的に見て来た。まず、ドイツのフランクフルトにはいり、高速列車、ICEを利用し、ブリュッセル、ロッテルダム、アムステルダムを足場に、ゲント、アントワープ、ブルージュ、デンハーグ、デルフト、ユトレヒトに日帰りで足を伸ばした。地下鉄、市電を利用し、極力歩いた。全ての都市が旧市街地を大切に残している。博物館巡りが主であるが、街そのものが歴史遺産である。17世紀のオランダの繁栄が偲ばれる。東インド会社に象徴される貿易の中心港アムステルダムの栄華は想像を絶するものであったであろう。運河の街で、生活地面と運河の水位があまりないのには驚かされた。もう一つ感じたことはアラブ系の人が多いことである。女性はベールをかぶっている人が多い、それも子供連れの女性が目につく。人種のるつぼ言われた米国にはない世界を感じた。欧州の特異性、寛容性、協調性、成長の原点があるように思う。また、いろいろな場所で中国人の観光客の団体を目にした。そのためか、フランクフルト空港での還付税を扱う職員が中国語を話せる東洋人であり、テキパキと仕事をこなしていた。3年前のフランクフルトで還付税を戻してもらうために2時間以上ならび、購入した物が手元に無いという理由で還付税を一部払い戻しして貰えず挙句の果てに、帰りの便の最後の搭乗者としてペイジされ、やっと間に会ったのとは大違いである。商品には中国語の説明があり、街の中でも中国語の案内が目についた。如何に中国の観光客が多いかと言うことであろう。ベルギー、オランダで、煙草を口にする人がなんと多いことか、特に女性の喫煙者は多い。中国、韓国の比ではないように思う。それに肥満の人も目立つ、それは食事の量が半端ではない。一皿の量は日本人には多すぎるが、彼らは仕事帰りに、仲間と大いに語り、ビール、ワインを楽しみながら二皿三皿をまたたく間に片付けていた。あの大きな体を維持するには必要なのであろう。しかしその土地の料理を頂くのは量、味付けは別にして楽しいものである。この旅でも人の親切に感動した。駅でコインロッカーの使い方を近くのお店の店員(一人しかいない)を煩わせることになった。クレジットカードしか受け付けないコインロッカーは難しく、3度もその店員はお店のシャッターを閉めて対応してくれた。旅をしていて思うことは人の親切、いろいろな人との出会いである。若い夫婦とフランクフルトからブリュッセルへのICEでの3時間の車中で出会った。ご主人はイラク人で、奥様が美人のロシア人である。 お住まいは仕事の関係ドバイで、毎年、1カ月近くの休暇で欧州を巡られているとのこと。全然趣の違う日本に招待しておいた。世界の人がもっといろいろな国を知ることは大切であると思し、人生をさらに楽しい物にしてくれるのではないかと考える。また、何時も感じることであるが、海外旅行をしていると、時間が経つのが大変遅く感じる。これも生活に変化を取り入れることが如何に大切かと言うことか?そのためにも海外に出ることをお勧めしたい。

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