コンテナ用塗料の水溶性義務化の影響は?/ コンテナ市況レポート 2017年3月

  • by 中尾 治美

寒い日がこのところ数日続いている。そうするといつになったら春が来るのか待ち遠しく思われる。しかし、毎朝の駅への通り道の桜並木道は淡いピンク色に変化しているのに気付くと、やはり春は確実に来ていると嬉しくなる。

トランプ大統領が2月28日の米議会で1兆ドル(約113兆円)のインフラ投資、法人税率引下げ、中間層向けに大規模な減税を実施すると演説した。これは米国経済の活性化、雇用創出、世界経済に与える影響は計り知れない。

翌日の米国株は、前日比303ドル高、2万1115ドル55セントで終え、過去最高値を塗り替えた。3月10日米労働省は2月雇用統計が非農業部門の雇用者数は前月比、23万5千人増、失業率は4.7%(前月比0.1%減)に改善したと発表した。米連邦準備理事会(FRB)の3月の利上げが現実味を帯びてきた。その結果、3月10日の日経平均株価は2015年12月7日以来の高値を更新、1万9604円を付けた。一方、円は$1.00=115円台に下がった。

3月5日、中国の全国人民代表大会で李克強首相は、2017年の経済成長率目標を、6.5%前後に設定。2016年の5700億元(約9兆4540億円)の減税実施後、2017年も3500億元(約5兆8千億円)の減税を実施する。引き続き財政出動に力を入れ、製造業、中小企業を対象に、その負担を軽減する。一方、広東省は製造業の最低賃金引き上げを2017年も見送る。最低賃金の抑制は中国全土で広がりつつある。これは製造業の人件費が高い中国から東南アジアへの工場移管の歯止めを狙っている。

アジア開発銀行(ADB)が2月末、2016年から2030年の15年間で26兆ドル(約3000兆円)のインフラ需要があると指摘した。中国、東アジア、東南アジア、南アジア合計45か国・地域の経済成長が続き、インフラ需要に投資が追い付いていない現状がある。それを背景に、新興国株に資金が還流しはじめ、世界の株式時価総額も過去最大に迫っている。そこには世界景気の拡大の期待がある。

業界紙によると、荷動き自体大きく伸びていないが、減便の効果か、2月に入っても運賃は底堅く推移しているとのこと。その主原因は中国・アジアのコンテナリース会社のデポ在庫が減ったせいではないのか?船会社の北米、欧州からコンテナの需要地である中国・アジアへのコンテナの空回送が上手くいっていないことが運賃値上がりの原因を作り出したのではないのか?船会社は使用しているコンテナが不足すると、その不足分をリース会社に頼ることになる。韓進海運の倒産がまだ船会社のコンテナ回しに変調をもたらしているようである。その上、船会社は、冬場は荷動きが少なくなるのでコストが掛かる北米、欧州から中国・アジアへの空回送を抑えてきたはずである。ところが韓進海運の倒産が船会社のコンテナ空回送に想像以上に支障をきたし、リース会社の中国・アジアのデポ在庫を借りざるを得なくなったのが現状ではないか?船会社が、デポ在庫を使用するマスターリース料金の値上げ、リース条件改善を積極的に受けていることが何よりの証明である。コンテナリース会社にとって明るい材料である。リース会社も不毛な長期リース料金競争を止める切っ掛けになったのではないか?とにかく船会社にとってもコンテナス不足が運賃下落を防ぎ、3~4月から始まるSC交渉で運賃修復が進むことを切に望むものである。

現在の新造コンテナ価格は溶剤系が$2,150 per 20f、水溶性が$2,275 per 20f。中国の新造コンテナ在庫は、55万TEU弱ある。4月から中国全土で水溶性塗料に替わるため、値段が上がる前の、リース会社の駆け込み需要が大層を占めているのは間違いない。中国華南地区を除き、中国全土のコンテナメーカーは製造ラインを溶剤系ペイントから水溶性ペイントに変更するのに生産量が一時的に減る可能性がある。工場生産能力が通常の規模に復帰するまでコンテナ不足が発生することが予想される。もしも船会社が北米、欧州から中国・アジアへのコンテナ空回送がうまくいかないとすると、コンテナリース会社の売り手市場がしばらく続くことになる。リース会社にとって、4月以降の時期は重要で、船会社からの信頼を勝ち取る意味でもその力が試される。

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