旧正月前後のコンテナの需給状況は?| コンテナ市況レポート | 2015年2月号

  • by 中尾 治美

2015年1月31日付け日本経済新聞に、パナソニックがテレビの中国・メキシコ生産から撤退の記事がトップ一面を飾っていた。日立製作所は2009年にテレビの海外生産から撤退している。シャープ、東芝、ソニーも海外での生産の縮小、撤退を表明している。

1950年代後半、日本の戦後の経済復興期にテレビは、三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)の一つであった。テレビが市場に出た頃は、高価で一般の庶民には手が届かなかった。そのため、テレビメーカーは街頭テレビを設けて宣伝に努めていた。その前には、ビックリするような大勢の人だかりが出来ていた。小生も遠くから良く見えない小さな画面を一生懸命に見た記憶がある。時代の最先端技術を目の当たりにし、子供心にもなんとなく明るい未来を意識したのを覚えている。

その時の実況中継はプロレスの試合で、力道山の空手チョップがアメリカ人プロレスラー、ルーテーズやシャープ兄弟の胸に炸裂し、彼らを打ちのめす姿を見て多くの日本人は大きな自信を得たに違いない。その時のエネルギーが、資源の無い日本を技術立国として、2009年に中国に抜かれるまで米国に次いで名目GDP世界第2位まで発展させる原動力になったに違いない。

90年代後半に、ブラウン管から液晶テレビに移行してもシャープの亀山モデルに象徴されるように日本メーカーはその高い技術力で世界をリードして来た。家電は“made in Japan”の象徴であった。しかし現在、その家電メーカーの力強さがあまり見られないのは残念である。薄型テレビ、韓国メーカーのサムスン電子に後塵を拝している。サムスン電子は薄型テレビと半導体メモリで世界第1位、携帯電話で世界第2位、今では中国メーカーにも押され気味である。

何事もそうであるように常に改革の努力をしていかない限り、一時の成功体験に満足していると世界の市場から退場を迫られることになる。これはどの業界にも当てはまることである。日本の船会社は、早くから国際化の波に晒され、1964年に海運集約で6グループになり、1973年の第1次石油ショック、1979年の第2次石油ショック、1985年のプラザ合意後の急激な円高の苦境を乗り越えるために合併を重ね、1999年にMOLがナビックスラインを吸収合併したのを最後に、現在の邦船3社体制になった。邦船3社とも円高対策のため定航部門本社機能を海外に置いている。NYKとK Lineはシンガポールに、MOLは香港に置いている。この春NYKとK Lineのトップの交代が発表され若返りを果たす。定航部門の比率が邦船3社の中で一番高いと言われているK Lineの定航部門の業績改善が目覚ましい。邦船3社は、2008年のリーマンショックの大混乱を乗り切り、過酷な競争の中でたくましく生き残っている。

 

 邦船3社定航事業部門業績

14年3月期
(実績)

15年3月期見通
(2015年1月末発表)
NYK 売上高 6,174 6,950
経常利益 -7 79
MOL 売上高 7,135 7900
経常利益 -145 -270
K Line 売上高 5,824 6800
経常利益 -1 185

単位:億円

 

 2月18日から中国は旧正月に入る。そのため今その前の駆け込み需要でコンテナメーカー、船会社、リース会社はてんてこ舞いであろう。現在の新造価格は1月と同じ$1,950 per 20f前後である。ただ中国のコンテナメーカーの工場在庫は80万前後に増えている。これも旧正月明けのコンテナ需要に対応してリース会社が投機的に発注しているためと考えられる。一方、北米西岸では北米西岸港湾労組(ILWU)と使用者団体(PMA)の交渉が一進一退の状況である。そのためコンテナ船は滞船、沖待ちを余儀なくされている。他方、北米東岸の大雪でコンテの港湾地区への戻しが遅れている。結果として、船会社は北米からのコンテナの空回送が思うようにできていないのが現状である。船会社は、北米からのコンテナの回送が出来ない分、3月からの旧正月明けのコンテナ需要に対して確保する必要がある。一応既に手当の目途を付けていると思われるが、予想より多くなった場合、追加でのリース会社の新造コンテナの確保、アジアで寝ているリース会社のデポ在庫をいかに確保するか各船会社のコンテナ・インベントリー担当の大きな悩みである。

輸入されて空になったコンテナ数の把握、需要地の必要コンテナ数を基に、各地から空回送できるコンテナ数を航路毎、本船毎にその需要地に割り振る仕事は並大抵ではない。その過程で、修理する必要があるコンテナも出てくる。コンテナ・インベントリー担当者の仕事は営業が必要とするコンテナを確保して当たり前で、手当できないとなると大問題となり、なかなか報われない仕事であるかもしれない。であるから、少しでもインベントリー担当者の方々の苦労が少なくて済むようなコンテナ需要であってほしいと考えている。

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