目次
米経済にブレーキ、消費と雇用停滞で成長率は1%に

米連邦準備理事会(FRB)が3日発表した地区連銀経済報告は、米国の経済活動が、大半の地区で7月上旬時点から、ほぼ変化がなかったと総括しました。また、関税政策の不透明さから、雇用に消極的な企業が目立ち、賃金が物価上昇に追いついていないために、米名目GDPの約7割を占める個人消費が横ばいから減少傾向にあると見ています。それを裏付ける資料として、米労働省が5日発表した8月の雇用統計によると、非農業部門の就業者は市場予想の8万人を下回り、前月から2万2000人の増加でした。また、米雇用者数の2025年3月までの過去1年間の改定値は発表値よりかなり低くかったことが明らかになりました。失業率は7月の4.2%から4.3%に上昇。就業者の減少は新型コロナウイルス禍の2020年を除けば、2010年9月以来となります。金融市場で米景気の先行きへの警戒感が広がっています。9月16日~17日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げは確実視されています。コロナ禍後、3%の成長率で世界経済を牽引してきた米経済は、2025年には1%前後に減速すると見られています。
再生エネルギーの主導権は中国へ、日本が取るべき戦略は?

世界各地で記録的な高温が発生し、深刻な熱波被害が報告されています。熱帯低気圧・台風・豪雨が発生する頻度が増加し、河川氾濫、大規模洪水が多発し、また各地で長期間の深刻な干ばつが発生、農業・畜産業への深刻な影響が見られます。更には、山火事の多発、小島嶼国や低地沿岸地域の浸水・塩害で住民が移住する事態が現実に起こっています。現状のまま温室効果ガス排出が続けば、地球の平均気温は今世紀半ばまで上昇し続け、2100年までに最大5.7℃上昇する最悪シナリオも指摘されています。
このような状況にもかかわらず、米トランプ大統領は、パリ協定から離脱し、温暖化対策の強化路線からの方向転換、洋上風力発電などクリーンエネルギーの開発制限、電気自動車(EV)関連の減税や補助金制度の見直し・縮小で、化石燃料への回帰を強めています。
一方、EUは、2022年2月ロシアのウクライナ侵攻により、その制裁措置としてロシアからの天然ガスの輸入を減らし、代替エネルギー調達と再生可能エネルギー導入を加速させました。EUはそれまでは化石燃料の6割をロシアに依存していました。EUの代替エネルギー(再生可能エネルギーと原子力等)の導入は急速に進んでおり、電力部門で大きな転換が進行中です。2024年上半期、EU地域発電量の50%が再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力、バイオマス等)となりました。風力は天然ガスを抜き、原子力に次ぐ主要電力源となっています。
太陽が出ている昼間だけ稼働する太陽光発電に比べ、風力発電は風が吹けば、365日稼働します。しかし、その風力発電、特に、洋上風力発電に大きな問題が世界で起こっています。洋上風力発電の場合、資機材、建設費の急騰で、設備投資・維持管理コストが陸上風力発電の1.5倍以上掛かり、洋上風力発電事業者は、採算悪化・資本損失を理由に、世界的に事業停止や合併・撤退する動きが出ています。
洋上風力発電世界大手のデンマーク企業、オーステッド(Orsted)がインフレ、金利高、新型コロナウイルス禍、ロシアのウクライナ侵攻の煽りで事業採算が悪化し、ノルウェーの石油大手エクイノール(Equinor)から最大60億デンマーククローネ(約1400億円)の追加出資を受けました。2024年にもエクイノールはオーステッドから25億ドル(約3600億円)の出資を受け、出資比率は10%に達します。売上高の7割超を洋上風力で稼ぐオーステッドは、2025年のトランプ政権の脱風力政策により、米国で建設を進めていたプロジェクトを8月に中止させられてしまいました。石油メジャーの英BPと日本のJERA(東京電力、中部電力の出資会社)は9月8日に洋上風力事業を統一しました。その一方で、三菱商事は8月27日、洋上風力発電事業から撤退を発表し、524億円の損失を2025年3月期に計上しています。
洋上風力発電の欧州・日本勢の撤退・停滞に反して、中国メーカーは価格・技術面の優位性を武器に海外市場(EU、BRICS諸国、一帯一路関係国)へ積極的に進出しています。中国製風力タービンは欧米メーカーの20~50%安価とされ、独自の大量生産体制、土台部材、ブレード、発電機など主要部品の6~7割を中国で生産されています。中国の洋上風力発電機生産量は世界シェアの約50%超、風力発電機の世界シェアは約40~60%と見られています。
太陽光発電も、中国の独壇場になっています。Top15太陽光パネルメーカーのうち9割以上が中国系企業です。シリコンウエハー(基板)は世界生産能力の約98%を製造、太陽電池セルは世界の85%以上を中国勢が供給、モジュール(完成パネル)は世界の約77%を生産、世界の太陽光パネル出荷量の80%以上が中国製です。日本の2024年太陽光パネル出荷量の8割以上が中国製です。知っていましたか?
電気自動車(EV)向けの電池の世界生産能力が需要の3.4倍なり、EV電池市場は供給過剰です。中国はEV電池生産シェアの7割を握っています。米国、日本などの各国政府は経済安全保障問題から、中国依存を避けるために国内での電池生産を後押ししてきましたが、EV需要が鈍化したことで各社、投資を縮小しています。一方、中国メーカーは投資を強化して、欧州自動車メーカーは中国電池メーカーへの依存を深めています。将来、日米欧と中国の生産能力や技術に格差が広がる可能性が出てきています。
EUは原子力がエネルギー安全保障の要であり、脱炭素社会への移行及び経済的に重要な資源であるとして、原子力発電に動き出しています。日本も資源の無い国として、核アレルギーを脱して原子力を見直し、水素、アンモニア等の多様な脱炭素エネルギー資源を組み合わせて活用することが不可欠です。

小笠原沖を含む日本の排他的経済水域(EEZ)では、メタンハイドレート(燃える氷)やレアメタル、レアアース泥、海底熱水鉱床など多様な深海資源が豊富に確認されており、これらの資源の開発・活用は日本の将来のエネルギー安全保障や経済成長にとって極めて重要な戦略とされています。
中国国家統計局の7月の経済統計は、小売売上高は前月比、0.14%減、6月に続きマイナス。電気自動車(EV)への買い替え補助金の効果が薄れ、自動車関連の販売は1.5%減、小売売上高の1割を占める飲食収入も1.1%増にとどまりました。7月の若年失業率(16~24歳)は17.8%となり、6月から3.3ポイント上昇しました。消費性向の高い若者を中心に節約志向が広がっているため、彼らの就職難が解消されなければ消費回復は望めません。不動産市況も改善せず、不動産企業の開発投資は12%減となりました。米国と貿易摩擦で関税の引き上げ合戦が起これば輸出企業に打撃を与え、さらに雇用悪化になりかねません。中国の2024年の粗鋼生産量は約10億トンで、世界全体の粗鋼生産量の半分以上を中国が占めています。太陽光発電、風力発電、EV電池も世界的シェアの50~70割を占めています。中国市場では余剰の鉄鋼、太陽光発電、風力発電、EV電池、EV自動車等が海外市場を安値で席巻し、世界市場に改革を要求しています。果たして我々はこの危機を上手く乗り越えることができるのか?MJSA=Make Japan Strong Again!
脅威を超え畏敬!規制強化にも屈しない、中国造船の圧倒的成長
中国からビックリするニュースが飛び込んできました。造船世界最大手の中国船舶集団(CSSC)は、傘下の中核会社2社を合併、中国船舶工業が中国船舶重工を吸収合併させました。CSSCの売り上げは1300億元(約2兆7000億円)を超えます。2024年の両社の新規受注実績は2862万載荷重量トンで世界首位でした。日本の造船企業の同年実績が1008万載荷重量トンですので、日本企業合計の3倍近くになります。中国造船業は急成長が続いていましたが、2025年5月に米通商代表部(USTR)が発表した、2025年10月から中国建造船に適用される入港手数料の徴収措置・規制が、新規受注量の減少をもたらしました。そこで、生産の無駄を省き、効率を高めるため、CSSCは中核2社の合併を促したものと思われます。勿論、中国政府の意向に沿うように動いていると思います。中国が考えている規模拡大路線は、万里の長城に例を取るまでもなく、はるかに我々の思考範囲を超えています。
コンテナ運賃が12週連続下落、需給悪化鮮明に
コンテナ船運賃指標(WCI) 2025年9月4日 ※Drewryより参照 | |||
航路名 | ドル/FEU | 前週比 | 前年比 |
総合指数 | 2,104 | -1% | -56% |
上海/ロッテルダム | 2,385 | -10% | -62% |
上海/ロサンゼルス | 2,522 | 8% | -58% |
上海/ニューヨーク | 3,677 | 12% | -56% |
Drewryが4日に発表した最新のコンテナ運賃指標WCIは、総合指標が前週比1%減、$1204 per FEUとなりました。12週連続で前週比下落となりました。欧州向けと地中海向けが下落し、米国向けが12週振りに急上昇し、全体の下落幅は縮小しました。Drewryは今年後半の需給バランスは悪化し、短期コンテナ運賃は下落すると予想しています。また、今年230万TEUの新造船が引き渡される予定です。輸送需要が船腹増加ペースに追いついていない現状もまた見えてきます。
世界8位の船会社HMM、買収先めぐり再び混迷の展開
2023年、HMMの70%以上の株を保有する韓国産業銀行と韓国海洋振興公社が、保有株式の入札を実施しました。Hapag Lloydも応札しましたが、韓国国内企業への売却に限定されたため入札から外れ、Pan Ocean・JKL Consortium が優先交渉対象者に選定されましたが、交渉が決裂し白紙に戻りました。ところが、ここにきて新たな候補として韓国鉄鋼大手のポスコグループが浮上してきています。筆頭株主になることを検討しているようです。9月1日現在、HMMはコンテナ運航船88隻、95万7794TEUを運用し、世界8位の定期船会社です。
2025年9月の新造コンテナ情報~生産減少、輸出需要も一服
8月の新造コンテナ価格は$1,650 per 20Fで、前月より$50、2.9%下がりました。鋼材が前月より1%、床材が13%近く下落したのが大きな要因です。8月の生産総数は、611,066 TEU(Dry: 572,584 TEU、Reefer: 38,482 TEU)でした。7月との比較でみると、総数、-93,265 TEU(Dry: -97,839 TEU、Reefer: +4,574 TEU)、比率では-13%(Dry: -15%、Reefer: +13%)となりました。当月の新造コンテナ工場在庫数、総数1,737,77 TEU(Dry: 1,678,071 TEU、Reefer: 59,706 TEU)でした。前月との比較は、総数+44,545 TEU(Dry: +42,145 TEU、Reefer: +2,400 TEU)、比率でみると、総数+2.6%(Dry: +2.6%、Reefer: +4.2%)となりました。当月の工場出荷本数は、総数566,521 TEU(Dry: 530,439 TEU、Reefer: 36,082 TEU)でした。先月から総数 -78,415 TEU(Dry: -47,432 TEU、Reefer: -3,983 TEU)、比率では、総数-12%(Dry: -12%、Reefer: -10%)となりました。夏場は輸出の例年ピークとなりますが、8月は中国からの輸出も一息ついたようです。
地方活性化の鍵は冷凍コンテナ、雇用創出と地域発展
8月20日(水)から23日(金)の3日間、東京ビックサイトでJapan International Seafood Showが開催されました。我社も3年続けてThermo King社と共同出展しました。昨年の3日間の入場者数は25,022人、今年は昨年より12%多い、27,932人となったとのことです。Thermo King/EFIのブースにも昨年より多くの人にお立ち寄りいただき大盛況に終わりました。



業界紙の現地取材で私が発信した今年のテーマは、“冷凍コンテナが地方を活性化する!”でした。その理由は、日本国内の漁港が大中小合わせて約2,866港にも昇ることです。私が問題にしたいのは、主に少数の地元の漁師さんが利用している2,134港及び離島の99港を活性化するのに”冷凍コンテナ“がお役に立つということです。その日に取れた魚は新鮮なうちに競りに出して売り切ってしまうか、そうでなければ冷凍倉庫に保管するしかありません。しかし冷凍倉庫を持っている小さな漁港が幾つあるでしょうか?冷凍倉庫を新たに建設する、あるいは近くの冷凍倉庫が有る場所で一時保管するとなると、費用対効果は全く無いと断言できます。しかし、冷凍コンテナさえあれば、旬の魚の価値を持続することができ、希少価値が出た頃に市場に出すことができます。2~3名の漁師さんと組んでやればそのコスト、リスクも分散できます。取れた魚の加工販売を始めると、その魚に付加価値が付き、人手が必要になります。雇用の創出です。地方の定年退職者、主婦を活用できます。活気が出てきます。近場の民宿、レストラン、スーパーに魚を直接卸し、商売ができます。仕事が軌道に乗るまでは、パート仕事で十分です。冷凍コンテナは加工品の保管、必要であれば冷凍コンテナ毎、必要な場所に移動できます。冷凍コンテナ毎、海外に輸出もできます。そうなるとその港は大きな輸出市場に育ちます。冷凍コンテナはその市場の規模により数を増やして行くことで取扱量を上手くこなすことができます。冷凍倉庫のようにその規模、固定場所に束縛されません。港で魚の養殖をやられている関係者の方にも是非お勧めしたいと思います。コスト管理が非常に分かり易く、取り扱いも簡単です。冷凍コンテナの使用を考えている方には、我々が、取扱い方法を丁寧に教えます。不具合が出た場合は我々がフルサポートしますのでご安心下さい。各地の小さな漁港が冷凍コンテナを利用して、その地方の特徴を出していければ、日本中で地産地消から始まり、大きな漁業、加工産業が育ち、隣り村、町、市の地方経済圏ができ、日本全体に大きな経済効果を生むことになります。島国、日本の将来は冷凍コンテナで明るくなること間違いありません。