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トランプ政策が生んだ歪み―強い富裕層と揺らぐ米経済

米商務省が9月16日発表の米小売売上高(季節調整済み、速報値)は前月比0.6%増、3ヵ月連続増加、トランプ米大統領の関税政策による商品値上げ、金利の高止まり、雇用鈍化により米国景気の減速感が強まっていますが、個人消費に衰えが見えないのは、高所得層の消費牽引力が予想以上に強いからと言われています。高所得層は株高などで貯蓄に余裕が出ていますが、低所得層や若年層は労働環境の悪化の直撃を受けているようです。
米連邦準備理事会(FRB)は9月17日、9ヵ月ぶりに0.25%の利下げを決断しました。トランプ米大統領の関税政策による景気の不透明感で企業は設備投資を控え、その手元資金が金融市場に流入しています。しかし緩和マネ―が実体経済を押し上げなければ金融市場も投資収益が低下して冷え込むリスクが出てきます。
9月30日、米国で電気自動車(EV)の購入補助が終了しました。米テスラの主力車が約2割高くなるため、大きな打撃となります。脱炭素に否定的なトランプ米大統領は北米産以外のEVも対象として、リース及び中古車の税額控除も9月末で廃止しました。
10月1日に米連邦政府予算が失効し、政府機関の一部閉鎖で政府職員約75万人の一時帰休が見込まれます。トランプ米大統領は、民主党が主導した低所得者向け医療保険補助(オバマケア関連)の社会保障費削減や支出効率化を求め、民主党に対する揺さぶりをかけることで来年11月の中間選挙を有利にする一環と考えているのかもしれません。しかし政府支出減が続くと、地域経済活動が月当たり10億ドル以上縮小するおそれがあると言われています。トランプ氏と息子が立ち上げた暗号資産会社が、規制緩和の恩恵を受けて急成長し、トランプ家の資産が1.1兆円に達しています。独立政府機関幹部の解任、Los Angeles・Chicagoへの治安維持の名目による州兵派遣の越権行為、誕生日の軍事パレードは大統領権限の私的利用、独裁政権のような権威主義の演出は、米国社会に大きな混乱をもたらし、その反動は、破天荒なトランプ米大統領に跳ね返ってくると考えるべきです。
BYD欧州快進撃―主役が変わる世界自動車市場?

ドイツ連邦雇用庁によると、8月の失業者が302万5000人となり、2015年2月以来となる300万人を突破しました。エネルギー高が、ドイツのGDPの約2割を占めるドイツ製造業を直撃し、リストラが相次いでいます。2025年6月までの1年間でドイツの自動車産業で従業員5万人あまりが削減されましたが、それはドイツ産業全体における人員削減数の45%を占めています。輸出量の減少、競争力の低下にドイツ自動車産業は危機感を強めています。一方、欧州における中国車の販売シェアは高まり、中国の電気自動車(EV)大手、BYDは販売店を増やし攻勢をかけています。
日本経済新聞がまとめた2025年7月~9月期における中国の実質国内総生産(GDP)の予測平均値は前年同期比4.6%増で、消費テコ入れ策が息切れして内需が振るわず、4~6期の5.2%増から減速すると見込んでいます。
米ブルームバーグ通信によると、10月4日中国が米国に国家安全保障を理由に、大型の対米国投資を実施する条件と引き換えに、対中規制緩和を求めていると報じています。中国は中国企業が米国に建設する工場で使用する中国製品の関税も引き下げるように要求しているようです。中国は2025年初めに1兆ドルの対米投資を提案しましたが、足元で示している規模は不明とのことです。米中は互いの関税を11月10日まで一部停止中です。
10月1日、中国自動車大手のBYDは9月の新車販売台数を前年同月比6%減、39万6270台と発表しました。前年実績を下回るのは1年7ヶ月ぶりです。海外販売は前年より増加しましたが、国内市場では苦戦しているようです。BYDと謂えども国内では熾烈な競争にさらされ、競争相手、民営大手のジーリー・オートモービル(吉利汽車)、新興のリープモーター(零跑汽車)に苦戦しているようです。
巨額入港税でも運賃値上げ回避、世界の船社が取る一手?
米国通商代表部(USTR)は10月14日から、中国関係船舶の米国港の入港に対して入港税を適用します。AXS-Alphaliner(仏)の試算によると主要船社の2026年の入港料負担(中国所有船・建造船の合計入港料)は、年32億ドル(約4700億円)に達すると見ています。中国海運大手、COSCOグループ(OOCLを含む)が約15.3億ドルと半分近くを占めます。一方、Maersk年$1750万ドル、Hapag Lloydは1億500万ドル、MSCは2億4000万ドル、ONEは3億6300万ドル、CMA-CGMは3億3500万ドル、Yang Mingは1億3000万ドルと試算しています。また、EvergreenとHMMは追加負担ゼロとのことです。上位5大船社は運賃の荷主への転嫁、追加料金を予定していません。その上、COSCOとOOCLも運賃転嫁を見送る方針を発表しました。ほとんどの船社が中国建造船を米航路から外し、船隊配備の再編成やリース元の切り替えなどで影響の軽減に努めています。しかし、収益面で大きな影響が出ることは間違いありません。
米税関・国境取締局(CBP)は10月3日入港料の支払いに関する通達を公表しました。入港料の支払いは、船舶が米国港湾に入港する3日前までに行う必要があること。また当該船舶が入港料の対象かどうかを判断する責任はCBPでは無く、船舶運航者にあると説明しています。支払いは財務省のサイト(Pay.gov)を通じて行う。CBPは同サイトを関連付けられた船舶入港・通関システム(VECS)上で支払いが証明されていない船舶は、支払い確認ができるまで荷役ができません。または通関手続きが保留される可能性があるとしています。
米主要港の小売輸入、年末にかけて前月・前年を下回る予想
全米小売業協会(NRF)は、9月9日、米国主要港における小売り関連輸入の実績と最新予想を公表しました。8月の予想は前年同月比1.7%減、228万TEU、前回予想から8万TEU上方修正しました。9月は6.8%減、212万TEU、前回予想から29万TEU上振れ、10月は13.2%減、195万TEU、前回予想から13万TEU上振れ、11月は19.7%減、174万TEU, 前回予想から3万TEU上振れ、12月は20.1%減、170万TEU, 前回予想から2万TEU下振れ、来年1月は19.1%減の180万TEUと想定しています。
中国初の北極海航路、欧州輸送18日で従来比半減

中国が北極海航路を使用して欧州へのコンテナ航路を開拓します。9月下旬、中国船会社シー・レジェンドが運航するイスタンブール・ブリッジは中国浙江省寧波港を出発しました。ベーリング海峡からロシア沖の北極海を横断し、英国最大のコンテナ港、フェリクストウ港へ18日間ほどで到着します。“南回り航路”は、マラッカ海峡を抜け、紅海に入り、スエズ運河を通過しても40日以上かかります。中国から中央アジアを経て欧州へ向かう国際貨物列車“中欧班列”も25日以上を要します。ただし、北極海を通過できるのは氷が薄い夏から秋に限定されます。しかし地球温暖化の影響で海氷域の面積が縮む傾向にあります。中国はトランプ米政権による対中関税引き上げに対抗するために北極海航路の活用で欧州貿易拡大を図ります。これは習近平指導部の広域経済圏構想“一帯一路”の一環で“氷上シルクロード”の開発を目指すものです。
世界コンテナ運賃16週連続下落、アライアンス各社が欠便戦略加速
コンテナ船運賃指標(WCI) 2025年10月2日 ※Drewryより参照 | |||
航路名 | ドル/FEU | 前週比 | 前年比 |
総合指数 | 1,669 | -5% | -52% |
上海/ロッテルダム | 1,613 | -7% | -58% |
上海/ロサンゼルス | 2,196 | -5% | -58% |
上海/ニューヨーク | 3,200 | -2% | -46% |
Drewryが10月2日に発表した最新のコンテナ船運賃指標WCIは、総合指数が前月比5%減、$1669 per FEUとなり、16週連続の前週比マイナスとなりました。中国が国慶節で1日から8日まで8連休となり、主要コンテナ船社はサービスの休止などを通じて需給を調整しています。一部のアライアンスは国慶節後も一部サのービスを休止する計画を打ち出していますが、需給低迷が続くようであれば休止の動きが加速する可能性が有るとしています。
2025年10月の新造コンテナ情報~年末輸出鈍化、在庫も減少
9月の新造コンテナ価格は$1,650 per 20fで、床板等が値下がりしましたが、8月と同じ価格が維持されました。9月の全体生産量(Dryは減少、Reeferは増加)は前月比減となりましたが、工場出荷数は前月比、9%増加となりました。Reeferの生産量は前月比増加しましたが、工場からの出荷数はそれほど伸びませんでした。
9月の生産総数は、584,841 TEU(Dry: 542,083 TEU, Reefer: 42,758 TEU)でした。8月との比較でみると、総数、-26,225 TEU(Dry: -30,501 TEU, Reefer: 4,276 TEU)、比率では -4%(Dry: -5%, Reefer: +11%)となりました。9月の新造コンテナ工場在庫数、総数 1,703,156 TEU(Dry: 1,648,151 TEU, Reefer: 55,005 TEU)でした。8月との比較は、総数 -34,621 TEU(Dry: -29,920, Reefer: -4,701 TEU)でした。比率でみてみますと、総数 -2%(Dry: -2%, Reefer: -8%)となりました。
9月の工場出荷本数は、総数 619,462 TEU(Dry: 427,997 TEU, Reefer: 47,459 TEU)でした。先月に比較し、総数、52,941 TEU増加(Dry: -102,442, Reefer: +11,377増)、比率では、総数9%増(Dry: -19%, Reefer: +32%)となり、例年の様に国慶節前の輸出増加がみられました。しかし、9月の生産量が減っているのに加え、新造コンテナの工場在庫数も減っているので、年末にかけて、中国からの輸出の勢いは軟化すると見ています。
高市女性首相誕生!? & 2年連続ノーベル賞、日本の未来に希望

10月4日(土)、自民党総裁に高市早苗さんが選ばれました。女性の総裁は1955年の自民党結党以来初めてです。高市氏は10月15日(水)に招集される臨時国会で、日本で初めての女性首相に選ばれる見通しです。派閥を持たず、何処の派閥にも属さない高市氏が政治の世界でリーダーになることは至難の業です。それだけ自民党の再生、日本の復活に対する期待は強く、高市氏には、リーダーシップを発揮して日本の政治、日本人の意識を変えてほしいと思います。
10月7日(火)、2025年のノーベル生理学・医学賞を大阪大学の坂口志文特任教授(74歳)が受賞したとのニュースが飛び込んできました。2024年の日本原水爆被害者団体競技会の平和賞に続き2年連続のノーベル賞受賞は、我々日本人が誇るべき名誉なことだと思っていましたら、8日(水)夕方、ノーベル化学賞に京都大学高等研究院の北川進特別教授(74歳)が選ばれたという速報があり、またビックリしました。奥様との会見を拝見し、彼の受賞は奥様の助けなくしてはなし得なかったということを知りました。私の場合と大いに共通点を感じ、いたく納得しました。私と同世代であるお二人に感謝です。70歳代で元気な方は日本のために、是非、現役で頑張れるところまで頑張ってほしいと願っています。我々の年代もまだ捨てたものではないし、これからの日本の若者に対しても良い励みになると意を強くしております。日本人が世界平和に貢献できると確信しています。