邦船各社の定航事業の業績は? | コンテナ市況レポート | 2014年11月

  • by 中尾 治美

日銀の黒田総裁が10月31日に追加金融緩和に動いた。昨年4月に量的・質的金融緩和導入以来のサプライズ政策である。長期国債購入額を約30兆円増やし 年間約80兆円にするとのことである。アベノミクスに対するカンフル注射で日本のデフレの終焉と大量の資金投入で2%の物価上昇を狙ったものである。しか しながら米連邦準備理事会(FRB)が10月いっぱいで量的緩和終了を正式に決定した後だけに、一気に一段の円安に動く結果となった。週明け3日のニュー ヨーク外為市場で、2007年12月以来の円安、$1.00=114円を付けた。その勢いは$1.00=115円の壁も時間の問題かと思わせる勢いであ る。

金融緩和の株高による個人消費、企業投資の促進、それに伴う物価高、賃金上昇で消費拡大、再投資のスパイラル効果を期待したものかもしれないが、株高は一 時的に投資家をよろこばせるだけで、黒田日銀総裁の2番目のサプライズは長続きしないのではないか?そしてその効果は輸入物価の高騰の波に押し潰されるの ではないか?

急がば回れの言葉通り、今安倍政権がやるべきことは成長戦略の地道な実行である。国民に将来の希望を与えることである。雇用の創造、それも定年退職した人 に彼らの力を出せる場、機会を与えることである。大都会ばかりが仕事の場所ではない。地方の再生、地方にこそ地方でなければできない雇用の機会があると考 える。円安は地方の特産物を輸出しやすくする良い機会である。大規模農業を促進し日本の農業を変える良い機会である。

景気と言うように、人の気の持ち方次第である程度、経済を良くも悪くも感じるものである。それはその時の政権の経済政策を成功にも失敗にも導くものとな る。安倍政権は遅くとも年内に、来年10月から予定されている消費税を10%に上げるか上げないかの決断をしなければならない。もちろん現在の経済状態で あれば増税しないことに越したことないが、国の借金が1,000兆円を超え、高齢化社会を迎えている現状において増税は避けられないのではないか?

一方、日本は生産性が低いと言われて久しい。OECD加盟34か国中第20位。主要先進7カ国で19年間最下位である。そのためにも規制緩和を進め、政治 家の不祥事が続く中、衆議院、参議院の議員数をそれぞれ思い切って半減し、政治家が身をもって国の財政健全化、プライマリーバランスを取ることを真剣に示 すのであれば、国民は年金減額、医療保険の負担増を敢えて受けるはずである。

日本の船会社は時代の先端を切って、早い時期に世界のコンテナ化のグローバリゼーションの競争の中で戦っている。少数精鋭の人数で、その生産性は高い。そ れでも世界経済の荒波にもまれて大変である。収益を上げるのは容易な事ではない。しかしこれが厳しい現実である。この厳しさの現実の中で邦船各社に強くた くましく成長してほしいと願っている。

邦船3社の定航事業部門業績

船会社を始め、コンテナリース会社、コンテナメーカー全て競争の真っただ中で生きている。現在新造コンテナの価格は$1,900 per 20fまで下がっている。この1ヶ月でここまで価格が下がることを予想することは難しい。一方、世界最大のコンテナメーカーであるCIMCが今年の第3四 半期(7-9月)の業績を発表した。純利益、5億8,665万元(約9,588万ドル)で、前年同月比、38.1%の増益。1-9月の売上高は189.9 億元、前年同月比、13.7%の増収とのことである。CIMCの力を侮れない。

中国メーカーの新造コンテナの総数は400,000teuを少々超えたぐらいである。主要リース会社は発注を止めるわけにいかない。調達資金を運用するた めに毎年ある程度の新造コンテナを購入せざるを得ない。それをまた運用する必要がある。そのため競争原理が働き、長期リースのレートがかなり下がってい る。あるリース会社は競争に参加せず様子見の体制を取っている。無益な競争をやらないで、様子を見る勇気も必要であるかもしれない。

弊社もこの10月に資本金を500万円増額し、1,500万円にした。取引金額が大きくなってきたことと、厳しい競争の中でどうしても支払い、受け取りサ イトのずれが出てくる。資本増強は避けられない。一方、スタッフ増強のため初めて求人をハローワークにお願いした。男女、年齢を指定できないので、営業部 門で英語必須、海運関係業務従事者としたところ、ハローワークが日本で働く外国人を紹介してきたのには少々驚いてしまった。日本語に堪能な36歳のパキス タン人、生粋の米国人また、埼玉県から東京都を経由し横浜までの通勤が必要なTOEIC 890点の日本人と経験豊かな人が集まった。これだけの人材であれば何か事業が起こせるのではないかと思うくらいの人材である。その中で目に適う人が見つ かり早速11月から来ていただき喜んでいる。一方、事務方に至っては1週間の応募で25名以上の人の履歴書をいただいた。あまりの多さに1週間で募集を打 ち切りにしてもらった。この事務方応募全ての人の経験をみると逸材である。小さな我社で苦労を共にできる人がその中に出てくることを願っている。

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