TPP発効によるコンテナ市況への影響は?/コンテナ市況レポート/2015年10月

  • by 中尾 治美

参加国12カ国から成る環太平洋経済連携協定(TPP)が10月5日、やっと合意に至った。5年半に及ぶ交渉の結果である。但し、発効の条件として、全参加国が議会承認などの国内手続きを協定署名から2年以内に終えられない場合、GDPの合計が85%以上を占める6か国が手続きを終えれば発効できるとした。そのためには日本、米国の批准が絶対に欠かせない。参加国は日本、米国、カナダ、オーストラリア、メキシコ、ペルー、チリ、ニュージーランド、ブルネイ、シンガポール、マレーシア、ベトナムの12カ国である。12カ国のGDPの合計は3100兆円(約26兆ドル)。世界最大の経済圏。関税をなくす自由化率は約95%に達する。

参加国 GDP構成比
米国 60.4%
日本 17.7%
カナダ 6.6%
オーストラリア 5.4%
メキシコ 4.5%
他7カ国 5.4%
合計 100%

特に日本にとって関心が高いのは農林水産品であろう。834品目の中で約440品目の関税が撤廃される。発効と同時にある品目は関税がなくなるが、長いもので16年を掛けて撤廃される。それ故、日本農業の再生時間はまだ残されている。若い人が魅力を感じる活気のある農業を目指して日本農業復活を実現してもらいたい。一方、日本の強い分野である自動車などの工業品は99.9%の品目で関税がなくなる。これを受け入れてくれた加盟国に感謝である。TPP加盟国が公正で自由な競争を通じ高い経済価値を生み出し発展する仕組み、ルールを目指して創られたものである。日本は他の加盟国がその利益、活力をお互いに享受し発展をサポートする責任がある。しかし日本自体自己変革することが難しいので、外的圧力が必要である。260年に及ぶ江戸幕府の鎖国政策によって鍛えられた内向きDNAの日本人を動かすことはなかなか難しい。是非日本の若者にこの商機を逃さないように積極的に国外に目を向け海外に出て行くことを切に望みたい。

世界の経済圏との比較

参加国 GDP構成比 参加国 人口
TPP 36.3% 12カ国 8.1億人
NAFTA 26.5% 3カ国 4.7億人
EU 23.9% 28カ国 5.0億人
ASEAN 3.2% 10カ国 6.2億人
  89.9% 53カ国 24.0億人

 

戦後70年、TPPは現在世界を覆っている一種の閉塞感を打破し、自由、公正を基本とする新しい秩序で世界変革を模索する流れに違いない。TPPが世界経済に新しい息吹を与え、新しい企業、いろいろな企業が活躍できる場を提供してくれる。これに伴い世界物流が変わる。経済発展は人、物の移動が基本である。船会社、物流会社及びコンテナリース会社に取ってこれから関税撤廃で伸びる物流量、新たな物流ルートを押さえることで次の商機が出てくる。待ちの姿勢でなくその流れを積極的に掴みに行く姿勢が必要である。長期的視点に立ってその努力を惜しむべきでない。その意味で、前向きな姿勢で取り組めば、TPPは大きな商機を我々に与えてくれる。

船会社はピークシーズンである9月は例年通り中国、アジアからのコンテナ船はそれなりに高い消席率で運行したようである。しかし残念ながら自社運用コンテナの範囲内で賄うことができたために新規追加リースまで至らなかった。そのため以前に決めた長期リースの引取も遅れており、船会社の自社発注新造コンテナも工場に大部分を残しているようである。現在の中国の新造コンテナの価格は, $1,600 per 20f を下回っている。中国のメーカーは生産ストップや生産調整でしのいでいるのが現状である。中国の全新造コンテナ数は1.4百万TEU弱である。

日本の8月の中古車輸出台数が前年同月比1.9%増の9万5,115台を記録した。6ヶ月ぶりの増加である。1~8月累計は83万5,714台を記録。前年度比1.1%増。これも円安のお陰か?

日本の中古車輸出台数(1~8月累計)

順位 輸出国 台数 増減 (前年度比)
No.1 UAE 9,245台 +48.3%
No.2 ミャンマー 8,316台 -35.0%
No.3 ニュージランド 8,039台 +1.6%
No.4 ケニア 6,763台 +15.6%
No.5 スリランカ 5,698台 +119.7%
No.6 パキスタン 3,966台 +50.0%
No.7 ロシア 3,926台 -66.5%
No.8 フィリピン 2,911台 +50.0%
No.9 バングラディシュ 2,393台 +50.0%
No.10 モザンビーク 1,462台 -18.1%

それを受けてか?日本国内での40fHC中古コンテナの需要が堅調である。仮に中古車の輸出台数の2割が中古コンテナを使用して輸出されるとすると、1ケ月に約4,200の40fHCの需要がある。

船会社、リース会社も古いコンテナと新しいコンテナとの入れ替えが進んでいる一方、場所によるミスマッチが起こっている。売却対象の中古コンテナをいかに需要地に回送するかが、船会社、リース会社の今後の課題である。現在、日本では各リース会社は船会社からの返却で在庫は増やしているが、売却に回るコンテナの数は限られている。日本のコンテナの需要に応えるためには国外から中古の売却コンテンを日本に持ち込む必要がある。しかし日本の中古コンテナの需要も時期、場所、Type/sizeで変化する。一方、日本は運用コストが高いため長期期間在庫になる事態は避けざるを得ないので日本への持ち込みはかなりリスクを伴う。その役目をするのがTraderである我々の仕事である。

弊社が代理店を引き受けている韓国企業、Kukdong MES(中国の法人名JJ MES)は開業以来毎年黒字で、それもかなり高い収益率を出している。弊社に日本の多くの大手銀行、金融関係の方がコンテナビジネスについて話を聞きにこられるが、2000年までは船会社、2000年以降リーマン・ショックまではコンテナリース会社が好投資先であったが、これからはTraderの時代ですよと伝えている。船会社、リース会社から10年以上たった古いコンテナの売却を専門に扱うTraderが今後良い投資対象になるので真剣に考えたらどうですかと勧めている。船会社、リース会社も我々Traderがいないと彼らの商売が成り立たない。船会社、リース会社も自分の古いコンテナを中心に売却する会社を持つが、今ひとつその枠を出ることができないで足踏みしているのが現状である。第3者で中立的なTraderがこれから大きく伸びると考える。全世界のあらゆる場所で中古コンテナの売買は増えていくものと考えている。その一環として弊社がお役に立てれば幸いである。

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