集約される世界の船会社2017年の動向は?/ コンテナ市況レポート2017年1月

  • by 中尾 治美

今年の正月、三が日は晴天に恵まれ、久しぶりに気持ちのいい正月を迎えることができた。元日の朝、近くの神社に恒例の初詣に出かけた。既に長い行列が出来ていた。軒下のお賽銭箱の横につるされている大きな鈴を鳴らし、賽銭を入れ、二礼二拍手一礼。会社の繁栄と世界平和を祈った。いつもの忙しい日常から解放された時間である。この日は実に時間が遅く進むように感じられる。一方、三が日、三食御節料理をいただくことになる。正月に新しい服で気持ちを引き締め、三段重ねの正月料理に舌鼓を打ち、日本人であることを確認する。しかし、4日目あたりからお茶漬けあるいは日本そばが食べたくなる。人間なんて贅沢にできているものである。

一方、この時期は日本中が休みになるので仕事人間として、仕事を忘れることに対して、少し罪の意識が薄くなる。仕事から解放される気持を喜んでいる自分を感じるのが嬉しい。しかしその時間も一瞬である。何かに追いかけられている気持ち、何かをやっていないと不安に駆られる自分が悲しい。いつものように気を引き締め一年の計は元旦に在りの精神に則り、いつものように新年の決心を立て、心新たにまた仕事人間に戻る自分である。

昨年一年間に5つの大手船会社が市場から消えた。その一つが韓進海運である。世界で7番目に大きな船会社が一夜にして崩れていく姿を見るのは、同じ海運関係に従事する者として見るに忍びない。韓進海運で生き生きと働いていた何人もの優秀な若者の顔を思い出す。彼らの夢を潰さないように何故できなかったのか。これも運命と簡単に片付けて良いものなのか。優秀な人材の働きの場が失われていくのが非常に残念である。

世界の船会社は、本年央の邦船3社コンテナ船新統合会社設立を機に7つの巨大船会社に集約されることとなる。

順位 船会社 占有率 運航規模
1 MAERSK + Hamburg Sud 21% 3,651,000 TEU
2 MSC 14%  2,680,000 TEU
3 CMA-CGM+APL   11% 2,172,000 TEU
4 コスコ+CSCL  8% 1,555,000 TEU
5 ハパックロイド+UASC  7% 1,471,000 TEU
6 NYK+MOL+K Line   7% 1,382,000 TEU
7  エバグリーン 5% 983,000 TEU

しかし上記の会社全てが残るとは限らない、まだまだ集約が行われるかもしれない。

2016年末の待機船腹量は142万TEUで、2017年に、170万TEUの新造船が出てくる。2017年のこの過剰船腹問題が運賃値上げの足かせになることが考えられるため、定期船会社にとつて2017年も苦難の年になりそうである。しかし、11月中旬から12月に入っても中国からの輸出は好調であるが、船会社はコンテナ余剰地からのコンテナ回送にてこずっている。その結果、リース会社に頼らざるを得ず、リース会社の中国のデポ在庫が払底している。マスターリースの条件も売り手市場のためリース会社にとって好条件で貸し出しが出来ている。そのためリース会社はアジアの余剰在庫を中国に何とかして集めるようにしている。リース会社の韓進海運からのコンテナ回収は約半分ぐらい進んでいるようであるが、世界各地に偏在しているのでまだまだ時間と回収費用が掛かることであろう。

中国からの輸出の好調は、1月28日から始まる旧正月前の駆け込み輸出が大いに貢献しているようである。中国の旧正月前後40日間で延べ30億人の大移動が見込まれている。特に農村部からの2億人の出稼ぎ労働者にとってこの時期は郷里で過ごす大切な時期である。

現在のコンテナ新造価格は$2,100 per 20f (溶剤系塗料)、$2,250 per 20f (水性塗料)で、工場在庫は50万TEUを切っている。デポ在庫が無くなったため、船会社は、旧正月前に新造コンテナもリース会社から手当てした。一方、今年の4月より中国での溶剤系塗料の使用が出来なくなるため(広州では既に昨年の7月から水性塗料のみ使用可)リース会社、船会社からの駆け込み需要が増えている。

日本の経済力が云々されているが、まだまだ改善の余地はある。日本のサービス業の生産性は米国の半分と言われている。ガソリンスタンドのスタッフの多さ、デパートのエレベーターガールの存在等は外国人からすると驚きに値するようである。しかしこれは日本人のサービス精神、おもてなしの表れでもあり、他との差別化の例である。そこに日本的精神と革新的なアイデアの調和でコーポレイトアイデンティーを造ることにチャレンジしていきたいと考えている。

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