新型コロナウイルス感染、日本の激減と世界の再拡大 / 反動需要とコンテナ不足、船賃高騰 / リサイクル、モーダルシフトへの取り組み / 岸田総理へ昇給システム改革のお願い | コンテナ市況レポート 2021年11月

  • by 中尾 治美

    現在、日本で新型コロナウイルス感染者数が劇的に減少しています。新たな感染者は11月7日(日)現在、日本全体で162人、東京21人、大阪39人と大都市での感染者が激減しています。死者はゼロで2020年8月2日以来とのことです。2020年1月以来172万4,519人が罹り、1万8,320人の死者数を出しました。果たして第6波は起こるのでしょうか?日本で2回のワクチン接種した人は70%を超えています。それでも何処行くにも必ずマスクを付け、ウガイ、手洗いを励行し、今では何処にでもアルコール消毒液が置いてあり、ほとんどの人は手が荒れるのではないかと思われるくらい使用しています。スーパーのレジでは相変わらず間隔を取り、レストランでは人と人との間に透明の仕切り板があり、人数制限、窓やドアを少し開け部屋の換気に努めています。一方、我々は自宅に帰ると玄関で靴を脱ぎ、40度の湯船に浸かり、一日の疲れを癒やし、体を清潔に保っています。我々にCOVID-19に対する抗体が出来たのでしょうか?権威ある医療関係者曰く、コロナ感染者数の激減は、デルタ株が強い変異株に進化することが出来ず、自滅したのではないか?と言っています。ワクチン接種による集団免疫取得と同時に、我々の生活習慣も大いに役立っていると思っています。しかし、実際のところは現在、日本は原則として全ての国からの入国を拒否し水際対策を維持しているのも大きな要因の一つのようです。経済活動復活の遅れが心配になります。
    一方、世界では感染の再拡大がまた進んでいます。世界の80ヶ国で増加傾向にあるとWHOは指摘しています。国民の7割がワクチン接種をしているドイツは11月5日に1日の感染者が3.7万人を記録しています。ワクチン接種の有効期限が約6ヶ月なので、追加接種を、英国は9月から、米国は9月末から始めて感染拡大防止に努めています。ロシアでは1日当りの死者数は連日1,200人に達しています。ポーランドなど中東欧でも感染拡大が続いています。アジアでは、シンガポールの1日当たりの新規感染者数が3,000人前後の高水準を維持しています。優等生の中国でも国慶節の国民移動の結果か?厳しい検疫を潜り抜け中国全土で11月1日現在、869人の感染者が出ています。来年2月の国民的大移動が起こる旧正月と冬季オリンピック・パラリンピック時にどうなっているのか不安が残ります。また、日本を含め100の国・地域では減少傾向にあると言及しています。インドは、一時期の、1日当たり40万人超えから1万人に減少しています。ベトナム及びタイは、10月、11月にそれぞれロックダウンを解除して経済活動を再開できるくらいになっています。

    ご存知のようにCOVID-19の影響で、“巣ごもり需要”、“リベンジ消費活動”が出てきますのでそのための準備をしておく必要が有ると思います。COVID-19のパンデミックで世界物流は2020年2Qから3Qまでほとんど止まりました。4Qから思いもかけない強い“巣ごもり需要”が出てきて、それもTeleworkを支えるために、自動車を始めとする製品需要が半導体不足を生み出し、世界的にサプライチェーン及び生産活動の減速、停止を招きました。一方、2021年1Qには収まるのではないかと期待していましたが、欧米の“巣ごもり需要”が更に強い反動需要となり、2021年2Q、3Qと現在も続いています。半端でない欧米の需要は、勿論、各国の経済活動の早急な立て直しのための国民に対する生活援助金、被害を受けたレストラン、会社等への補助金が大いに貢献していることは間違い有りません。その強い購買力が”巣ごもり需要“、”リベンジ消費”を創出しました。その結果、コンテナ不足、船賃高騰を極限まで押し上げることになったと言えるのではないでしょうか?世界の主要港のコンテナ船の長期沖待ち、揚げ地での人手不足、シャーシー不足、鉄道貨車不足でサプライチェーンの物の流れに支障をきたしました。それがまた更にコンテナ不足、船賃高騰をもたらす悪循環に陥っているのが現状です。

    10月の新造コンテナ製造個数、623,879 TEU (Dry: 611, 348 TEU, Reefer: 12,531 TEU)。10月末の新造コンテナ工場在庫数、613,006 TEU (Dry: 547,590 TEU, Reefer: 65,416 TEU)。10月末の新造価格は$3,850 per 20f。前月比-2.5%減、$100下がっています。添付資料参照願います。

    下記リストが今年1月から10月までのTop 6リース会社のDry Container発注量です。昨年12月末のDry在庫が約20万TEUでしたので、今年10月末の工場在庫を総生産量から引くと、大まかに言って約520万TEUの新造コンテナが、今年の10ヶ月間で船会社に引き取られたことになります(勿論、その中には船会社の自社コンテナ発注分も含みます)。これも歴史的記録です。このまま行くと2021年の新造Dryコンテナ総数は650万TEUを超すことが予想されます。単純に言うと例年の2倍近い新造コンテナ製造となり記録的生産量となります。

 

2021 Top 6リース会社新造コンテナ発注量

Rank name nbr / 000 ratio (%)
1 Triton 1,060 19
2 Textainer 556 10
3 Bea / CAI 328 6
4 Florens 268 5
5 Seaco 215 4
6 SeaCube 105 2
7 Other 3,014 54
  合計 5,546 100

2021年10月末現在
BeaconとCAIはOwnerが三菱HCキャピタルなので合算しています。

 

    邦船3社の定航部門が統合したOcean Network Express (ONE)の2021年4~9月期決算は、税引き後利益が67億6000万ドルと前年同期比10倍を記録しました。2022年3月期通期税引き後利益は117億6000万ドル(約1兆3300億円)を見込んでいます。その結果、親会社3社も2022年3月期連結最終利益をそれぞれ上方修正しました。日本郵船が売上高2兆円(前期比24.3%増)、最終利益7,100億円(410%増)、商船三井は売上高1兆2,200億円(23.1%増)、最終利益4,800億円(433%増)、川崎汽船は売上6,900億円(10.3%増)、最終利益3,700億円(240.4%増)を見込んでいます。この儲けを如何に自己成長の投資に使うか?特にONEには世界海運をリードする会社になってもらいたいと期待しています。

    新型コロナウイルスで分かったことは、生活関連物資についてある程度自国生産する必要が有るということではないか?ということです。マスク、医薬品等必要時に自由になりません。食料自給率向上もこれから更に真剣に考えていく必要があると考えます。それから、自国で毎日大量に捨てられる食料品、この無駄は避けなければなりません。それに家電、自動車、プラゴミ等破棄する物が出ない100%近いリサイクル方法を国民を上げて考えて行く必要があると思います。日本が世界から揶揄される不名誉な“化石賞”を貰わないためにも石炭火力発電所問題についても早急に解決策を出す必要が有ると考えます。
    国がトラックから海上、鉄道へのモーダルシフトを提唱してかなりの年月が経ちます。横浜市港湾局は、東京オリンピック・パラリンピック時の東京都内の交通緩和を目的として横浜港と東京港、千葉港を結ぶ艀(はしけ=コンテナバージ)を時限的に使用しました。実入り4,029TEU、空2,089TEUを輸送したと9月15日に発表がありました。コンテナ船から陸揚げされたコンテナ、あるいは積むための実入り、空コンテナを混雑する都市部を避け、艀を利用することは検討される価値が有るのではないでしょうか?東京、大阪はもともと運河の都市です。横浜港、川崎港は東京湾に面していますし、神戸港から大阪港への艀運送はもってこいの地の利でないでしょうか?欧州の主要港、ロッテルダム港、ハンブル港は言うに及ばず、陸地奥深く運河が張り巡らされています。そこに艀が頻繁に運行されています。積み下ろしは設置費用が膨大なガントリークレーンではなく、小回りの効くリーチスタッカーが縦横無尽に艀からコンテナの積み下ろしを行っています。そうなると日本でも、もっとモーダルシフトがより有効な手段になると確信します。

    最後に先日行われた衆議院選挙で絶対安定多数を獲得した自民党の岸田文雄首相にお願いしたい。大企業は別にしても、90%以上を占める中小企業のマネージメントが社員の給与を、毎年、定期昇給させるような昇給システムを考えてほしいと願っています。そうすれば多くの中小企業が喜んで社員の給与を毎年上げると思います。そうすると支出も増え、税収も上がり、国の経済が大いに回りだすと考えます。OECDによると2019年の日本人の平均年収は3万8617ドルで、米国6万5836ドル、ドイツ5万3638ドル、韓国4万2285ドルに対して大きく見劣りしています。優秀な社員ほど給与が上がると会社に対する貢献度が上がることは間違いないと考えます。マネージメントの仕事は社員が毎日会社に来たくなる雰囲気を作り、楽しく仕事ができるようにすることであると確信します。ボーナス・給与が上がることが、大きな一つの要因であることは間違い有りません。ボーナスは、勿論、利益の範囲内ですが、私は毎年、社員の給与を上げています。これは私の信条です。それはある意味では無謀かもしれません。EFIマネージメントにとっても挑戦です。結果を出していく必要が有るからです。しかし、毎年、社員がそれに応えてくれています。私は社員を誇りに思っています。

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