コンテナ市況レポート 2010年10月

  • by 中尾 治美

8月の欧州航路のアジアから欧州向けは依然好調で過去7カ月間2ケタの増加、但し、東航(欧州からアジア向け)は過去4カ月連続のマイナスとなる。一方、大型船の投入で運賃は弱含み既に下がり始めている。北米は9月に新学期が始まる新学期商戦に期待したほど消費が伸びず、クレジットカードの使用残高も23カ月連続で減少し、米国の借金消費型に変化が出ており年末商戦への不安が出ている。北米コンテナ船の平均消席率も90%前後で運賃も下がってきているが欧州ほどではない。10月1日から7日まで中国は国慶節で、中国全土で事務所、工場が閉鎖される。そのため、船会社はそれに呼応するように船のスペース削減を実施し、運航コストの削減を図るが、中国からの輸出が元に戻るまでは心理的にどうしてもコンテナ船のスペースを埋めるために運賃の安売りに走る傾向がある。

船会社は今後新造船の引き取りによる船腹増加、冬場の輸送量の減少よる運賃低下のプレッシャを如何に克服するかが大きなカギを握る。これから年末までに最大 100万TEUのスペースカットが必要と見込まれている。これは1月の151万TEUから22万TEUまで減少した待機船がまた100TEUに戻ることになる。船会社の厳しい状況は暫く続くことになる。

話は少々生臭くなるが、この一カ月は中国と言う国に対して世界の工場として全面的に信頼して良いのかと言う問いに対して、全世界が考えさせられたのではないか?

日本の尖閣諸島での中国漁船拿捕に対する一連の中国の報復問題、レアアースの輸出停止、日本に対する輸出入通関の遅延、フジタ社員のスパイ活動と称しての拘束、もろもろの日中間の閣僚級交流、行事及び日本への団体旅行者の大々的なキャンセル等々数上げると切りが無いが、中国の必要なまでの領土、海洋権益に対する強い野心、現政権(共産主義)崩壊の危機意識の高さは言論の自由に対する厳しい締め付けを見ればよく理解できる。そのため、中国政府にとっては、ノーベル平和賞(皮肉にも現在服役中の民主化運動家である劉暁波氏に与えられた)は受け入れがたいものであろう。

長い間の眠れる獅子からやっと目覚め、一躍世界を凌駕出来る力を手に入れた?(これはあくまで錯覚であるが。)世界の工場として、世界で一番の外貨準備高を誇り、それをマネーゲームで運用し、金の卵を産む鶏を手に入れた如く、USA,日本、ギリシャの国債の売買を政治的に利用しようとしている。日本に対して挑戦的であり、日本の経済の混乱、弱体化を狙っているようである。日本の過度の中国依存度は中国に対して喉元の剣のごとく日本コントロールに自信を与える。日本の国債購入で、円高に誘導で日本産業の空洞化促進で揺さぶりをかけた。おまけに、8月には日本国債を2兆円も売却し、ちゃっかり為替差益を稼ぐというアメリカのマネーファンド並みの錬金術である。其の注目を回避するために今回の尖閣諸島の領有権問題を引き起こしたのかもしれない。日本の技術力に対しては中国で製造させることでblack boxを開示させ、自国の技術として世界に売り出す。そのため特許権の意識は薄く、模造品についても寛大である。

自国通貨は米ドルに連動させ、一向に元切り上げに応じようとせず(経済成長が止まれば中国国民の不満を制御できなくなり現政権の弱体化を恐れている?)、世界の国との人権問題の調和は現政権の命取りになるからか?中国は自国をまだ一人前で有ると認めようとせず、世界に一人前になるまで大目に見てくれと言っているようである。

何を言いたいかと言うと、この甘えた中国の考え方をかえられるのは日本しかいないと言いたいのである。中国からベトナム、インドと製造地が移動していくのは歴史の必然であろう。しかし、これは少し長い時間を掛けて行かざるを得ないし13億人の中国の人間を無視はできない。日本と中国は歴史的にも決して無縁ではありえない。遠い昔のすべの文化が中国、韓国と経由し日本に到来し、日本文化として定着したことは、日本国民のDNAの中に深く刻み込まれている。近いが故に反目し合うことはあるかもしれない、しかしそれは決してお互いに理解できないと言うことではない。これから長い時間をかけて、心理的に近い隣人、韓国、台湾、香港、タイ、シンガポール等と一緒になって理解を深める努力をして行く必要を痛感する。どの国の人達も一人ひとりは実に屈託のない魅力ある愉快な人達である。理解しえないはずは無い。中国にこれからの未来の世紀に向って世界の重要な役割を果たす国として活躍してもらうよう手助けできるのは日本人が最も相応しいのではないか?

話を元に戻すが、世界のコンテナ産業は平和な時代無くして繁栄は無いのである。コンテナは世界に幸福をもたらす器である。まだまだコンテナリース会社は高い稼働率、95%以上を維持し、過去にない最高利益を出す一年となると予想されている。長期リースでの契約がほとんどであり、過去の長期リース契約が割安なため、船会社も返却しないでそのまま使用している。また返却されてもほとんどがコンテナの重要地であるアジアであるため問題無い。

こうなってくると、またリース会社のM&A(売り買い)問題が出てくる。コンテナリース会社の過去40年の歴史で、いつも一番元気なリース会社がその対象となる。それは所有者のとって大きな投資リターンをもたらすためである。残念ながら、小生が26年間在籍したトライトンも今回売却の対象になっている。それは所有者である世界の大富豪の一人であるシカゴのプリツカ―家の11人の遺産相続人が遺産分与を主張しているためである。今回の売れ値はUS$1 billionとのことで、2006年に売却寸前までいった時の金額であるUS$2.5 billionを下回るが、其の金額には負債を含めていた違いがある。今回は待った無しのようである。既存のコンテナリース会社に売られない事を祈るのみである。売られた会社の人間はどうしても会社に残れない。トライトン創業者で一人残ったエド・シュナイダ―氏は金は出すが口は出さないマネーファンド会社を模索しているようであるが、このご時世にどんな会社が出てくるのか分からないが、切に良い所に身売りされることを祈るのみである。

いずれにしてもこれからのコンテナリース会社の生き残る道は、規模の拡大であると考える。現在のトライトンのコンテナ運用規模は1.6 million TEUで有るが、この運用規模が倍の3.2 million TEUの会社が同じマンパワーで運用出来れば単純に言って運用コストは半分になることになる。狙わない手は無い。現在のコンピューター管理システムでは300万TEUも問題無くクリアー出来るであろう。現在のコンテナリース会社もどちらかと言えばファイナンスリース会社に近くなり、船会社にとってあまり利点が無いと考える。

コンテナリース会社の違いも見受けられない。こうした中でリース会社としての特徴をどのように出して行くのか?コンテナリース会社が長期リースだけの運用を目指すならファイナンスリース会社の域を出ず。長期リース料金の熾烈な競争に明け暮れることとなる。

TAL、GeSeCoも買い手がいればいつでも売られると聞いている。1970年代のコンテナリースの草創期に大手リース会社のCTIがリース会社で初めて、マスターリースの包括契約と言う概念をこのコンテナリース契約に持ち込んだ。 また、今ある保険契約、DPP(Damage Protection Plan)をSeacontainerが発案し格段のリースコンテナの普及を図った。長期リースだけに専念したInterpoolもそれなりの役割を負っていた等々、各社それぞれ特徴が有り印象的だった。そうした特徴あるコンテナリース会社は全てこのコンテナリース業界から姿を消した。もし、今の現状にコンテナリース会社が満足しているとするなら、将来は明るくないと考えるが如何であろうか?

新造コンテナの価格は、$2700~2800 per d2 から既に$2500 per d2に下がっているとのこと。 $2700~2800 per d2が異常に高いことはコンテナ価格の歴史から見てもいえるが、これから適正価格に向かうことになるのであろう。商品を安全に運ぶ箱と考えるなら、もっと手頃な価格に安定してもらいたいと考える。

いずれにしても、毎年古いコンテナが何百万TEUと中古市場に出て来る事は周知の事実である。中古コンテナの第二の活躍の場を提供するためにもコンテナ中古業者に掛かかる使命は大きいと言える。日本の国内市場でもっと中古コンテナの需要を喚起、創造するために、いくらかでも貢献できればと考えている。

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