【市況レポート】「日米中経済がそれぞれ抱える課題」「海運業界の現状と今後」他 2023年7月

  • by 中尾 治美

米国経済はサービス業が牽引。パウエル議長の発言による利上げ競争懸念

  米労働省が7日に公表した6月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から20万9000人増加となりました。失業率は3.6%で5月の3.7%から0.1%低下しました。平均時給は前月比0.4%上昇し、前年同月比から4.4%の上昇となりました。全米雇用レポートによると中小規模の事業所やサービス業の雇用が堅調でした。業種別にみると、レジャー・宿泊サービスが23万2000人、建設業が9万7000人、物流サービスが9万人、天然資源・採掘業が6万9000人、教育・医療サービスが7万4000人それぞれ増加となりました。しかし一方、製造業が4万2000人、情報サービス業が3万人の雇用減少となりました。米国経済は製造業が良くなく、サービス部門が支えているのが現状です。

 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は6月28日、今後も利上げを排除しないと強調しました。それは世界の中央銀行による利上げ競争をもたらしています。世界の政策金利は6月26日時点で5.9%となっています。リーマンショック危機で5.7%です。インフレ鎮静化のためとしていますが、行き過ぎた高金利はサービス部門にも大きな影響を与ることになりますので、パウエル議長にはそろそろ高金利政策を控えてもらいたいと希望したいです。

日本の金融緩和政策継続は庶民の生活を圧迫する

 一方、我国の円通貨はドルに対して2021年1月、1 USD=103 JPY以来の円安、1 USD=142 JPY台です。ユーロに対しては2020年5月、1 EUR=115 JPY以来の安値を付けて、現在1 EUR=155 JPYです。これは6月16日に日銀総裁、植田和男氏が、前日銀総裁、黒田東彦氏が10年間も継続してきて、上手くいかなかった大規模金融緩和政策の維持を発表したことによります。いつまで日本は、一国だけ、金融緩和を続けて行くのでしょうか?10年かけて成功しなかった政策は直ぐに正すべきです。輸出産業の花形であった自動車産業も今は多くの部品を海外から輸入しています。その分コストが上がり、そのしわ寄せは円安値上げとなって、我々庶民の生活を圧迫します。我々庶民の生活を守ることができないような政策は、即刻、改めるべきと思います。

中国の隠れ負債は1100兆円超か!不動産不況が深刻化

 中国経済の回復が鈍いです。それは地方政府が財政難に陥っているからです。一説には隠れ負債が1100兆円超あると言われています。中国の国内総生産(GDP)の3割を占める不動産業が大きな不振に落ち込んでいます。過剰な借金でインフラ開発を進めてきました。コロナ禍で50%増加した膨大な隠れ負債はいま中国経済活動の足を引っ張っています。マンションの在庫水準は高止まりし、不動産開発投資減、建材需要減、その結果、鋼材価格低下をきたしています。中国政府は世界全体の5割を占める粗鋼生産量の調整に苦労しています。2023年の粗鋼生産は4年ぶりに10億トンの大台を割り込むとの観測もあります。

米国輸入コンテナ貨物量見通しは年末に向かって改善予想

 世界物流に対する明るい話題もあります。全米小売業協会(NRF)は、7月以降の輸入貨物見通しを修正しました。7月194万TEU(前年同月比、11%減)、8月203万TEU(同、10%減)、9月196万TEU(同、3.4%減)、10月197万TEU(同、1.8%減)、11月188万TEU(同、5.9%増)と予想しています。8月以降は上方修正となり、11月は2022年6月以降で初めて前年同月比でプラスと予想しています。

コンテナ運賃は9週連続で下落

英国調査会社、Drewryが6日に発表したコンテテナ船運賃指標WCIは、総合指標が前週比1.3%減の1474.32ドル/FEUとなり、9週連続で下落したと報告しています。

コンテナ船運賃指標(WCI) 7月6日
航路名ドル/FEU前週比前年比
総合指数1,474-1%-79%
上海/ロッテルダム1,345-2%-86%
上海/ロサンゼルス1,6384%-78%
上海/ニューヨーク2,5903%-75%

海運業界の不振は今年いっぱい続くか

 海上コンテナ輸送についてまとめると、北米航路は7月に入っても回復の兆しが見られません。インフレの影響で消費活動が冷え込み、過剰在庫問題の解消がまだ見えてこないことが原因でしょう。欧州航路は年初から徐々に荷動き回復基調にあります。4月にアジアから欧州向けは前年度比12%増、144.6万TEUと2か月連続でプラスとなりました。これもロシア特需が絡んでいるのでしょうか?一方、中国と深くかかわるアジア諸国の荷動きの勢いは強くありません。船会社は引き続き余剰在庫をリース会社に返却しています。リース会社の世界各地のデポは殆ど満杯状態で受け入れる余地はないようです。船会社もリース会社も10年以上経過した古いコンテナの売却を速めているのが現状です。ですので船会社、リース会社、コンテナメーカー、海貨業者、そして港湾業者も、今年いっぱいは忍の一字に尽きるようです。

2023年6月の新造コンテナ情報

 6月新造コンテナの製造本数は前月比3%増、171,795 TEUでした。Dryは145,419 TEU、前月比マイナス1%の生産減、Reeferは26,376 TEU、前月比35%増となりました。6月生産はReeferに比重が移りました。新造コンテナ工場残は958,542 TEU (Dry: 875,856 TEU, Reefer: 82,686 TEU)で、先月から45,598 TEU減少です。全体で217,393 TEUが工場から出荷されました。その内訳はDry: 189,234 TEU, Reefer: 19,159 TEUとなり、Dryの注文はほとんど伸びなかった代わりに前月在庫比21%が出荷されました。それが今月の工場在庫が減った大きな要因です。残念ですが、新造価格については今月も言及はありません。

目覚ましい活躍をする日本の若者3人に共通すること

 仕事で明るい材料があまりありませんので、少しでも気持ちを明るくする話題を提供したいと思います。それは世界で活躍する日本の若者には目を見張るものがあります。私の独断と偏見から数名を上げてみます。まず第一にWBC(World Baseball Classic)で日本の世界一に貢献し、現在、MLB(Major League Baseball)で大活躍している29歳の大谷翔平さんです。投打の二刀流でMLBレジェンドであるGeorge Herman ”Babe” Ruth氏に匹敵あるいは超えたと、何かと話題になっています。毎日、彼の活躍を目にするのが楽しみです。二人目はボクシング元バンタム級4団体統一王者、30歳の井上尚弥さんです。2022年6月に世界で最も権威のあるアメリカのボクシング専門雑誌 “ザ・リング” でPFP(Pound for Pound)で一位に選ばれました。2023年1月にWBAスーパー・WBC・IBF・WBO世界バンタム級王座を返上し、階級を一つ上げて、世界スーパーバンタム級の2つのチャンピオンベルト(WBC&WBO)を持つ、Stephen Fulton Jr.に7月25日、東京・有明アリーナで挑戦します。必ず早い回にKOで勝利すると信じています。最後の若者は藤井聡太さんです。若干20歳の若さで、今年6月、羽生善治氏と並ぶ二人目の七冠を達成しました。自分が保持しているタイトルを守りながら他のタイトルを取るのは大変なことです。日本の将棋界には八タイトルがあります。彼が八タイトルを手中にするのも時間の問題だと思います。

 この3名に共通することは、礼儀正しく、奢らず、偉ぶらず、温厚、冷静沈着、自然体それで愛想が良く、相手や周りに大変気遣いする方々です。また、驚くほど努力家であること。そして自分がやることにストイックに集中している姿は素晴らしいと思います。それから自分の競争相手の悪口を言っていることを聞いたことはありません。日本人として大きな誇りを感じます。我々が世界に誇ることができる方々だと思います。しかし私はこの3名が特別だとは思いません。我々日本人が日頃から兼ね備えるように教えられてきた人格であるからです。

日本の若者よ!もっと世界に出て行って世界を平和な世界に変えよう!

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