コンテナ市況レポート 2012年11月

  • by 中尾 治美

11月7日オバマ米大統領の再選が決まった。これは米国にとって大きな意義があると考える。人種に対する偏見、少なくとも人の肌に依る偏見が緩やかになっていることの証である。4年前黒人オバマ氏が大統領候補になること、ましてや黒人大統領が誕生することなど想像できなかった。また、オバマ氏再選が僅差であったとしても、米国は我々が考えている以上に国民の意識変革が進んでいるように思う。それは彼が立身出世の象徴であり、彼の存在が人々に希望を与えている。特に貧しい人に。その人達に雇用を与えるために、オバマ大統領は米国に生産財の自国回帰を促している。それは彼の再選の重要なマニフェストでもある。彼が強調するMade in Americaが見直され、世界の物の流れが変わってくるのもそう遠くは無いと考える。当然コンテナの流れも変わる。米国大統領のマニフェストは1年足らずで総理大臣が交代する日本与党のマニフェストと雲泥の差がある。現実性が高い。オバマ大統領に自国の困難に打ち勝つ経済浮揚を期待したい。You give me hope.

相変わらず円高($1.00=JPY79)にさらされている日本であるが、裏を返せば日本に対する高い評価である。政争に明け暮れる懲りない政治家を選んだのは我々であるが、それは国民の実態を映す鏡で無く、経済は政治家に任せられないという反面教師の結果である。日本の経済はまだまだ一流である。この円高を嘆く前に、民間の力でこの円高を大いに利用すべきである。円高を良いチャンスにすべきである。もっとM&Aに打って出るのも手である。その会社が利益を生んでくれる。日本の得意とする分野に投資することである。10月に2012年のノーベル生理学・医学賞に決まった山中伸弥京都大学教授のiPS細胞の再生医療や新薬開発を支援することを政治家に最低お願いしたい。このことは政治家が誰であろうとも、どこの政党にとっても異論が無いはずである。日本はまだまだ捨てたものではない。自信を持とう!

11月に入り欧州のコンテナ運賃が上がりだした。それは各船会社、アライアンスが航路の一部を取り止めて荷主に値上げを求めたからである。世界一の大手船会社であるマースクラインの11月からの値上げ決定も大きい。過剰船腹が不当な運賃競争を生み出している。この限られたマーケットシェア―争いを過大な投資を必要とする船舶で行うことは船会社の消耗戦となる。生き残れる船会社は限られてくる。生き残った船会社にとっても決してハッピーエンドで終わらない。大きくなれば小回りが利かなくなって時代に合わなくなり市場から退場せざるを得なくなる。これは歴史が証明している。お互いに切磋琢磨して成長する健全な競争が働くマーケットが大切である。船会社が赤字経営を強いられるには、不当な低運賃を良しとする荷主側にもその責任がある。運賃が安定しないことは荷主にとってもマイナスである。船会社が少なくなれば荷主が最大の被害者となる。もし船会社が健全な競争でサービスを競い合っているなら、使用する荷主側にとってもその利益を享受できる。船会社にとって、リース会社の経営が一つのヒントになるのではないか? リース会社で身売りをするところはあるが倒産したところは無い。80年代、90年代は儲けているリース会社はM&Aの対象になって来たのである。2002年以降大手リース会社の中で毎年最高利益を更新している会社は多い。

大手のリース会社の内、2~3社を除き、国慶節明けにかなりの新造コンテナの注文を出している。Florenceを除けばほとんどのリース会社は投機的な買い付けにみえる。リース会社の発注理由は年前半に高く買ったコンテナ価格を平均値で下げるためか?確保した投資資金を消化するためか? それとも来年に引き渡されるコンテナの新造船船腹量が過去最高の170万TEUになるのを見越したものなのか?  Florenceの発注のほとんどは来年大型船が出て来る親会社COSCOへの長期リースのためである。他のリース会社も来年大型船が出て来る船会社とすでに話しを付けているのかもしれない。

一方、工場在庫は10月末現在、50万TEU近くまで積み上がっている。コンテナ価格は大口購入価格で$2,250 per 20f前後である。この価格が底で価格は下げ止まったと言えるのではないか。これから各メーカーは強気に出るであろう。それはこれからの冬場の不稼働期にリース会社が揃って20万TEU近い大量な注文を思いもかけず入れてくれたことである。

他方、リース会社も問題を露呈している。リース会社の売り手市場時に決めた長期リースコンテナの返却がアジア中心の返却になっているため、返却本数がアジアの主要港に集中することである。上海、香港、シンガポール、釜山。主要港の近くのデポ敷地に限りがあり、ほとんどのリース会社が同じデポを使用している。返却デポを内陸、あるいは遠距離の場所に確保せざるを得ない。リース会社は船会社からの返却が出来ない状態を避けるためにいろいろな手段を使ってその過剰在庫を需要地に持ち出す努力をし始めている。但し、もし本格的に船会社が返却するようなことになるとリース会社にとって大きな問題である。

来年には我が社が日本の代理店を務めるFBC社のサイド・リア開放の20F Siding Door Container(FBC社が特許を所有)の国内での展示販売を予定している。当製品に興味を持って頂いているお客様からの強い要望に応えるためである。既存のコンテナに新たな革新を引き起こすキッカケを作って行きたいと意気込んでいる。価格的には10%程度高くなるが、その実用メリットからいえば短期間で投資を回収できる。荷物の積み込み、荷降ろしがフォークで短時間に出来るからである。LCL荷物にも最適である。またこのコンテナは通風、採光が確保しやすく、作業環境が飛躍的に改善される。これは現場で荷作業に携わる人にとっては朗報に違いない。是非現場の方々の苦労の軽減に貢献出来ればと考えている。このようなコンテナを大々的に使用する船会社は他社との差別化で優位に立てるはずである。しかし、そのためにはリスクをとる勇気がいる。そんな型破りな船会社が出てきてほしいと考えている。そのような船会社を我々は全力を挙げて応援したいと考えている。

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