韓進海運経営破綻の衝撃とその影響 / コンテナ市況レポート 2016年9月

  • by 中尾 治美

“韓進海運経営破綻―法定管理申請”の記事が9月1日木曜日の業界紙の見出しを飾っていた。コンテナ船運航規模、世界7位、韓国船社1位の韓進海運は保有船157隻(内自社船64隻、借用船93隻)を全世界80余か国の16,400社の荷主と取引をしていると言われている。そして今年の5月に来年から新しいアライアンス、”ザ・アライアンス“に参画することで合意していた。その上、韓進海運は大韓航空と同じ韓進グループのメンバーである。

その韓進海運が”経営破綻?“と一瞬目を疑った。財政的に問題があるとは聞いていたが過去にも同じような噂があった。それを乗り超えてきた。韓国最大の海運会社、韓進海運は韓国のFlag Carrierである。1977年に設立された歴史は比較的新しい船会社である。1997年には独セネターラインを買収し韓進海運は船腹規模的に世界5大船社の一角を占めるに至った。韓国経済の一翼を担っている会社である。

ちなみに韓進海運の法定管理で釜山港はトランジット貨物の40%を失い、4,400億ウォン(412億円)の収益を失い、1万1,000人の雇用不安を引き起こすと言われている。誰しも韓国最大の海運会社、韓進は潰れない。最終的には公的機関が何とかすると考えていたのではないだろうか?しかしそれが現実のものとなった。韓国経済にとっても大きな損失である。またそれは韓国経済だけでなく世界的に混乱を招いている。どうしてもう少しソフトランディングができなかったのだろうか?韓国船社のもう1社の雄である現代商船は資産を売却することによりこの難局を乗り越えた。そして今年7月に現代商船は2Mアライアンス(マースクライン、MSC)に来年4月から加盟する。韓進海運にはめぼしい資産が残っていなかったのが原因であると言われている。現代商船が韓進海運の資産を買収し合併という話も進んでいるようである。

一方、韓進の経営破綻でコンテナ船運賃の値上がりが起こっている。新聞発表によると韓進の現在の運航船97隻のうち60隻以上が外洋で待機または港湾で荷役拒否されているとのこと。その輸送中の貨物の荷主の数は8300社にものぼり、貨物総額は約16兆ウォン(約1兆5000億円)になると言う。その貨物が外洋待機、荷役拒否で遅配となると荷主、受け荷主とも大きな損失を被ることになる。船会社は荷主に対して今回のような大手の韓進海運が破綻した場合、海運会社として貨物の最終荷受人に安全に速やかに届くように手助けする必要があるのではないか? もちろん船会社は通常の営業単体であるが、ある意味ではある程度の公共性を担っていると考える。

ある程度大きな規模の船会社が経営破綻した場合は荷主に対してそれを形成しているアライアンスあるいは他の船会社の協力を得て、速やかに全ての荷物を安全に最終荷受人に届くようなバックアップ・システムを構築する必要があるのではないだろうか?今後ますます増えていく世界的な物流および世界の物流業界を支えていくためにも海運業の存在意義は高いので、少し違った海運業界の公共性の面を強調してもいいのではないか?

各船会社の運賃競争のためのコスト削減の努力は凄まじいものがある。競争に負け市場から姿を消していく船会社のことを考えると、果たしてそれがほんとに荷主、海運業およびそれに従事する人、その物流により恩恵を受けている全世界の人々のためになるのか?その結果、そのあとに残るものは何なのか?もうそろそろその問題を考える必要があるのではないだろうか?

一方、中国の新造価格は$1400 per 20f 前後、新造コンテナ工場在庫は71万TEUとのことである。

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