【市況レポート】「日銀の異次元緩和継続の限界」「シンプルな米経済」「EFIの経営哲学」他 2024年3月

  • by 中尾 治美

日銀の異次元緩和継続はもう限界か?庶民の苦しい現実

 総務相が8日発表した今年1月の2人以上の世帯の消費支出が28万9467円で、実質、前年同月比6.3%減少、これは11か月連続となりました。一般の庶民の人たちの昇給が物価上昇に追いつかない現状、支出を切り詰めるしかありません。こうなると経済活動が上手く機能していかないことは明らかです。
 前黒田総裁が2016年1月に2%の物価目標達成のために、日本で初めてのマイナス金利政策を採用しました。保険・年金の運用利回りが低下し、年金生活者を苦しめる結果となりました。日本銀行総裁、植田和男様、日銀の10年前の政策にしがみ付くこと自体、時代から取り残されていると言えます。躊躇することはありません。直ぐにゼロ金利やめて、お金を借りるには金利が付く当たり前の経済活動に戻すべきです。
 片や、米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、COVID-19のパンデミックの反動の巣ごもり需要・リベンジ需要で引き起こされたインフレ対策のために、2022年3月、過去2年間のゼロ金利政策を解除し金利を0.25%引き上げました。それに対して多くの主要国も自国通貨防衛のために追随し金利引き上げに走りました。
 片や、日本はデフレ脱却のために市場に大量の資金を供給する(日銀が国債を大規模に買い入れる)異次元緩和政策を取り、為替は円安に転じ、輸出企業は業績が改善し、株価が上昇しました。雇用も400万人増加したと言っていますが、その大部分は女性と高齢者であるため、実質的には賃金上昇が抑えられる結果となりました。一方、大幅な円安で輸入物価が高騰し、庶民は自己防衛のために消費を抑えざるを得ません。庶民が苦しんでいます。誰のための経済政策なのでしょうか?成り行き任せは政策ではないと思います。早急の修正をお願いしたいと思います。
 2023年末で償還する必要がある普通国債残高は、1070兆円で、政府債務はGDPの2.5倍以上に拡大しています。金利上昇に耐えられない財政になっています。異次元緩和は経済効率を高める本来の機能をダメにしてきました。日本のゾンビ企業を生き長らえさせ、「日本の失われた成長」を30年にしてしまったと言えると思います。

シンプルな米経済、雇用増と物価高の中、FRBは利下げに動くか?

 米労働省が8日発表した2月の雇用統計は、非農業部門の就業者数は前月比で27万5000人増加。失業率は3.9%と1月の3.7%から上昇しました。それでも25ヵ月連続で4%を下回っています。平均時給は前月比で0.1%、前年同月比で4.3%上昇しました。これは米国の雇用システムは景気が悪くなるとレイオフ、早期退職で人減らしをし、景気が戻るとレイオフを中止あるいは早急に求人を始めます。労働者もその時に条件をみて転職をしますので給与の上昇が半端ではありません。また企業もコストを売値に乗せることに躊躇しませんので物価上昇もすごいものがあります。1月の離職率は338万件、これはコロナ禍前の水準を下回っています。このことは景気がすでに頭打ちになっている証拠です。
 米連邦預金保険公社(FDIC)が7日、米銀の貸出債権の2023年10~12月の延滞・滞納率が0.86%となり、7~9月期比で0.04ポイント上昇したと発表しました。延滞率の増加は5四半期連続となります。特に目立つのが商業用不動産(CRE)融資やクレジットカード債権です。銀行、庶民が金利高に悩んでいます。米国連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は米国経済をソフトランディングさせるためにも早急に金利を引き下げて銀行、庶民の負担を軽減すべきです。
 全米小売業界(NRF)が今年2月の輸入量実績と予想の改定を公表しました。2月の下方修正を除き、全て上方修正となりました。1月前年同月比0.3%増、181万TEU、2月20.4%増、186万TEU、3月5.5%増、171万TEU、4月2.6%増、183万TEU、5月0.3%増、194万TEU増、6月5.5%増、193万TEUとしました。
 米国向けコンテナのうちスエズ運河を経由するのは約12%ですが、不安定さと不確実性をもたらせています。喜望峰経由のルートが増加していますが、新造コンテナ船を追加船として活用することで、既に需給環境に改善がみられるとしています。運賃市況もアジアから米国東岸へのサービスは順調に推移しており、運賃高騰は緩和の兆しを見せているとコメントしています。

EU経済の停滞と中国の負債問題

 EU統計局が8日発表した2023年10~12月期の実質域内総意生産(GDP)は前期比ゼロ%と横ばいで、年率換算ではマイナス0.2%に転落しました。インフレと利上げが個人消費を押し下げ、ウクライナ問題が景気を冷え込ませ、輸出が振るわなかった結果です。
 中国は不動産不況対策や地方財政悪化による国債・地方債の発行増加で、利払い負担が増えています。2024年の利払い負担は前年比7.8%増の1兆2746億元(約27兆円)となり、過去最大となります。中国経済の回復に時間がかかるようです。

Ocean Alliance延長!生き残りをかけたONEの戦略は?

 2月末、Ocean Allianceは現行の2027年までの協定を5年間延長し、2032年までとすると発表しました。その結果、Ocean AllianceのmemberがThe Allianceに移る可能性はほとんどなくなりました。
 ONE(Ocean Network Express)はどうするのでしょうか?ここは是非、残りのThe AllianceのメンバーであるYang Mingに加え、HMMを含め、これから大きくなろうとしているアジア船社をまとめて、The Asia Allianceで欧州勢に対抗してほしいと思います。あるいは独立し、小粒ながらピリッとしたフットワークを生かした定航専門会社として、ONEらしいサービスを提供し、他社との差別化を図って欲しいと願っています。

コンテナリース会社の稼働率99%超の背景

 2月13日、Textainer、世界第2位のコンテナリース会社が2023年度の業績を発表しました。Textainerは昨年10月に米国の投資会社、StonepeakにM&Aされました。売上高、7億7,040万ドル(前年度比、4.9%減)、営業利益、3億7,250万ドル(前年度比、21.1%減)、当期利益、2億470万ドル(前年度比、33.9%減)となりました。2023年の年間を通したコンテナ稼働率は98.9%とかなり高い比率を維持しています。2022年の稼働率が99.4%ですので0.5%としか落ちていません。この高い稼働率はほかのリース会社もそれなりに同じ状況であると想像されます。
 リース会社は、COVID-19のパンデミックが終了した後も、驚異的な稼働率を維持しています。これは、船会社が、パナマ運河の渇水問題での通航制限、並びに、紅海でのイエメンの親イラン武装組織フーシ派による一般商船攻撃で喜望峰経由を余儀なくされた結果、航海日数の増加により船腹及びコンテナを余計に投入しなければならなくなっただけでなく、一度、リースコンテナを借り入れると、なかなか思うように返却出来ない現状があるからです。現にTritonによれば、長期リースが終わっても、船会社に引き続き使用されているコンテナが、彼等の運用総数700万TEUの14%、98万TEU近くあるということがこれを示しています。即ち、船会社は長期リース解約後も、大量のコンテナを数年間使用し続けているということです。

2024年2月の新造コンテナ情報

 2月の新造コンテナ価格は$2050 per 20f。前月に比べ、$50, 2.4%値下がりとなりました。新造コンテナ製造本数は 251,084 TEU (Dry: 249,441 TEU, Reefer: 1,643 TEU)。発注本数も前月と比較し、36%減、内訳はDry: 37%減、Reefer: 92%減でした。2月末の中国の新造コンテナ残は、730,544 TEU (Dry: 679,100 TEU, Reefer: 51, 444 TEU)。工場残は前月と比較し、8%減、内訳はDry: 8%減、Reefer: 16%減となりました。結果として2月には工場から新造コンテナ316,996 TEUが出荷されました。

EFI創立15周年:感謝と展望、EFIの経営哲学

 EFIはこの3月2日で創立15年目を迎えました。長いようで短かったと言う印象です。定年退職後、自宅で粗大ごみ扱いされては困るので、東神奈川駅近くの貸事務所にデスクを借り、一人でコンテナ売買を始めました。最初の頃は、資本金500万円を投資して電話も問い合わせも来なかったらどうしようかと考えていましたが、幸運なことに、世界経済もリーマンショックから1年余りで立ち直り、2010年年初から世界貿易が元に戻り始めコンテナ市場を後押しくれましたので、その考えは杞憂に終わりました。
 最初は、コンテナ販売業者である韓国会社、Kukdong MESの日本代理店として出発しました。Kukdong MESのStaffはほとんどの人が若く、韓国の人特有の性格から、年上の私に対して、リスペクトをもって接してくれましたので、大いにやる気になりました。Kukdong MES社のスタッフに助けられ、仕事は順調に伸びていきました。
 海外製品・サービスの日本の代理店の話が出て来る度に、それを扱えそうな知人をリクルートしたら喜んで働いてくれました。一方、過去の関係先で製品を買ってくれそうな会社、担当者に紹介すると喜んで買ってくれました。この商売をやっていて今でもそうですが、見えない誰かに背中を強く押されて商売をしているように思うことがあります。

EFIの主な代理店各社:

Thermo King Reefer container unit, generator maker
TydenBrooks   Security Seal maker
JJAP  Tank Container maker
Mirai HitecChassis maker
KalmarReachstacker, Forklift, Terminal Truck maker
UES   Major Container Leasing firm

 どれも大きな重要な柱です。 

 入社してくれたスタッフの方も大変優秀で、今では私の出番が無くなっています。それからスタッフの人達に伝えているのは、上場するまでは、会社はスタッフのものです。スタッフが幸せになる会社にしたいと思っています。各スタッフが毎日会社に来たい。毎日、社長の私、他の社員に会いたくなるような会社にしたいと考えています。一方、EFIの成長が望まれているなら、その望まれているところまで成長したいと考えています。現在の事務所が手狭になってきていますので、次は、スタッフに喜んでもらえる地の利が良く、広い事務所を探したいと思っています。
 最後になりますが、この度の弊社の15周年のために、多くのお客様からお花、プラント、温かい祝電をいただき感激してしまいました。この機会をお借りして、深く御礼申し上げたいと思います。引き続きスタッフ一同、皆様に喜んでいただけるような会社を目指していきたいと思っております。更なる御指導・ご鞭撻をお願いしたいと切に望んでおりますので宜しくお願い申し上げます。

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