北京五輪が国内外に与える影響 / 賃上げがインフレを抑制しSDGsに貢献する / 非アライアンス船社のシェア拡大 / サプライチェーンの貢献 ~コンテナ市況レポート 2022年2月

  • by 中尾 治美

    中国の旧正月休暇は大晦日、1月31日に始まり、2月6日に終わりました。但し、コンテナメーカーは例年通り2月中旬まで休業となります。中国文化観光省によると春節連休7日間に延べ2億5100万人(前年同期比2.0%減)が国内旅行に出たと報じています。ほとんどの人がCOVID-19対策のために近場旅行に徹したと見られています。
    北京冬季オリンピックが2月4日に開催され、中国のIT技術を駆使した開会式の演出は眼を見張るものが有りました。北京は2008年に夏季オリンピックを主催し、夏季・冬季オリンピックを主催した初めての都市となりました。それは北京の気候温度が冬は-8℃、夏は31℃という環境はもちろん、コロナ禍対策の徹底したロックダウンで統制が取れ、財政も豊かな中国だからできる偉業だと思います。それを鼓舞する国威発揚の意味も大きいと思います。
    現在も競技結果が日夜報道されていますので、冬のスポーツとしてのスキー、スケートが中国国民に与えるインパクトは想像以上のものがあると思います。今後、中国でスキー、スケートの人気が上がり、それを楽しむ人が出てくると関連グッズも売れるでしょう。将来、若者が冬、スキーに出かけ内需を盛り上げるのに一役買うことになるでしょう。

    米労働省が4日発表した1月の雇用統計の非農業部門の就業者数は前月から46万7000人増加し、市場予想の15万人増を大幅に上回りました。1月の失業者は4.0%で12月の3.9%より0.1%悪化しました。一方、賃金は上昇し、時間当たり平均賃金は前年同月比5.7%増加し、2020年5月以来の大幅な伸びを記録しました。
    米国では2022年に全米の5割にあたる25州が最低時給の引き上げを実施します。
バイデン大統領は政府と契約する企業の最低時給を15ドルに引き上げる大統領令に署名しました。民間も人出不足を解消するために賃上げを実施しています。アマゾンが最低時給を15ドルから18ドルに上げ、小売業のウオルマートが全米約56万人の従業員の平均時給を16ドル40セントに引き上げ、金融業のJPモルガン・チェースが入社数年の若手の給与を1~2割引き上げることを決めました。農機大手のディアではストライキの結果2021年11月に2割の賃上げと一時金の増額に成功しました。全米で賃金引き上げの動きが広がっています。
    一方、米国政府支援によって2020年4月には過去最高の34%まで上昇した貯蓄率は、2021年12月には8%に下がっています。その減少幅は低所得者層ほど大きく米国個人消費パワーの脆弱化が懸念されていますが、それを解決するのが賃上げです。賃上げ効果は仕事のミスマッチを解消し、米国にさらなる経済成長をもたらすものと確信します。その力強い米国経済が今後、世界経済を牽引していくと考えられます。
    ニューヨークのWTI原油先物取引で、原油が2月4日に一時1バレル92ドルまで上昇しました。2014年10月以来、7年4ヶ月ぶりの水準となりました。市場は100ドル突破も視野に入れているようです。しかし資源・原材料高、人件費・物流コスト高は製品・商品・サービスのコスト増加となり、インフレ要因になりますが、それを抑制するためには、日本企業のように利益を内部留保として積み上げないで、積極的に研究・開発あるいは有益な案件に投資する必要があると思います。給与を上げることも有益な投資であると考えます。利益の一部を必ず給与に反映していけば、それが力強い購買力を生み出し、持続可能な開発目標(SDGs)となりうると考えます。

    現在、世界で起こっているコンテナ船の長期滞船問題、特に米国のLA/LB港での大量滞船・港湾インフラ問題は米国社会基盤の脆弱さの象徴です。一刻も早く国家事業として世界サプライチェーンの寸断・混乱の解決を図るべきであると考えます。海上運賃の高止まり、コンテナリース会社の100%近い稼働率、コンテナの世界的偏在も起因は米国のLA/LB港に象徴される問題が発端です。この問題は2022年いっぱい、あるいは2023年にならないと解決しないと専門機関は言っています。それが米国、いや世界のインフレの元凶になる可能性があると考えます。
北米西岸航路の3大アライアンス船社もうかうかしていられないのは、非アライアンスのシェアが2020年半ば以降から増加してきたことです。それはCOVID-19のパンデミックによるロックダウン・工場閉鎖の結果、世界のサプライチェーンが寸断され世界の港の混雑・混乱によりアライアンスのコンテナ船の欠便がサービス低下をもたらし、スペース不足が海上運賃の高騰を招き、中国・アジアで大コンテナ不足を引き起こし、旺盛な“巣ごもり需要”、“リベンジ消費活動”に応えられなくなったことが要因です。2022年2月後半には非アライアンス船社のシェアは38%まで拡大するといわれています。北米東岸の非アライアンス船社のシェアは1割程度と言われています。欧州航路は3大アライアンスが圧倒的なシェアを誇っていますが、非アライアンス船社の活動が見られますので安閑としていられないと思います。
    2022年1月末、新造コンテナ価格は$3,400 per 20f。12月末の$3,550 per 20fから$150下げ、4.2%の下げ幅となりました。2021年6月の$4,000 per 20fを頂点に新造価格は$600下がり、15%下落しました。1月の新造コンテナ生産本数は466,851TEU (Dry: 443,707TEU, Reefer: 23,144TEU)。新造コンテナ工場残は812,636TEU(Dry: 749,338 TEU, Reefer: 63,298 TEU)で、先月末より6,008TEU減少しました。1月に472,859TEUのコンテナがリースか船会社が自社コンテナとして引き取り輸出されました。旧正月前の輸出が如何にすごかったか想像できます。しかし製造価格の低下については中国コンテナメーカーの強かさ、販売本数を確保するために値上げをあえて控えているように思います。

    2月以降の新造コンテナ製造本数は冬季需要減の季節的要因に加え、旧正月で多くの工場閉鎖、オミクロン株に対するロックダウンのために減り、コンテナ新造価格もより緩やかな低下傾向を取るものと考えます。しかし一方、新造コンテナ価格が下がるこの時期に新造コンテナをあえて発注し夏場の需要に備えることもコンテナリース会社の新造コンテナ調達方法の一つとなっています。それはコンテナ製造ラインを止めたくないコンテナメーカーの思惑と一致します。またその考え方は年間を通して物流を止めないサプライチェーンへの貢献が大きいと言えます。

 

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