【市況レポート】「4年ぶりの欧州出張:Intermodal Europe 2023」「EU独占禁止規則によりアライアンスの見直しが必須」他 2023年10月

  • by 中尾 治美

4年ぶりの欧州出張:Intermodal Europe 2023

 Amsterdamで開かれたIntermodal Europeに参加するため10月8日(日)、成田10:25発、KLM864便で旅立ちました。2020年、2021年はCOVID-19パンデミックで開催が中止され、2022年には開催されましたが、COVID-19の流行が下火になるまで参加を見送った結果、2019年11月以来4年振りの欧州出張です。総勢7名の参加者で、私を含めて3名が10月9日(月)夕方に開かれるCOA receptionに参加し、後の4名は10月9日にAmsterdamに入りました。

 いつもなら市内にホテルを予約するのですが、今回は円安で市内のホテルがかなり高額なのと7名の大所帯なので、車で移動したほうが何かと便利と考え、郊外のHoliday Innに投宿しました。スキポール空港でレンタカーを借り、空港、ホテル、会場、レストランと車で移動できたので、また違ったAmsterdam、オランダを見ることができました。私と先に来た二人は、仕事で欧州に駐在したことがあり、そのうちの一人はRotterdam駐在で、オランダにはかなり詳しく、彼の運転で非常に安心できました。

 往きの飛行機はシベリア上空を利用できないので、アラスカ経由北極回りでAmsterdamに入りましたので14時間、今までより約2時間も余計にかかったことになります。復航は南回り、ポーランド、カザフスタン、中国の上空を通り帰国することになり、北半球を一周したことになりました。円安とインフレの影響で、以前よりモノの値段が50%以上値上がりしているように感じました。日銀の植田総裁には早く円安の修正をお願いしたいと思います。

 驚いたことには、ホテルに到着すると8日パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃し、イスラエル軍も反撃し、双方に民間人を加え多くの死傷者が出たことをBBCが伝えていました。ロシアのウクライナ侵攻に中東が加わり、世界はますます混迷を深めています。何とか戦争を避け、平和裏に問題が解決できないものかと願うばかりです。

米国経済:金融引き締めの長期化を懸念、輸入量は前年より減少予想

  米労働省が6日に発表した9月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は前月から33万人増加し、失業率は3.8%で8月と同じでした。平均時給は前月比0.2%上昇し、前年同月比で4.2%伸びたことになります。就業者数の伸びが予想の2倍近くに伸びたことや、自動車大手組合の大規模ストライキの賃上げ要求によりインフレ率が高止まりする可能性に対して、金融市場はFRBの金融引き締が長期化をするのではないかと見ています。今、世界経済を引っ張っているのは米国です。その牽引力をつぶすような更なる利上げは必要ないと、連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長に言いたいと思います。

 米国小売業協会(NRF)がまとめた最新レポートによると今年8月の実績は、輸入予測は昨年8月以来の200万TEUと見ていましたが、実際は196万TEU、前月比2.3%の増加にとどまりました。そのため6カ月予想も次のように修正されました。9月4.3%減(前年同月比)の194万TEU、10月3.1%減の194万TEU、11月7.5%増の191万TEU、12月8.9%増の188万TEU、2024年1月4.2%増の188万TEU、2月12.7%増の174万TEUと予想しています。2023年通年の小売コンテナ輸入量は2230万TEUから2210万TEUに減少と見ています。

WTO、2023年の世界貿易量予想を下方修正

 Container Trades Statistics(CTS 英国)によると、今年8月の世界のコンテナ荷動き量は、1,531万5,523 TEUで、前年同月比3.7%増加となったと報じています。

 世界貿易機関(WTO)は5日、2023年の世界貿易量(財貿易量)は前年比0.8%増で、前回の4月予想(1.7%増)から下方修正しました。2024年の世界貿易量は3.3%増と前回予想と同じとし、世界の実質GDP成長率は2023年が2.6%、2024年が2.4%としています。その上、サプライチェーンの変化の兆しを指摘しています。世界のサプライチェーンの活動指標である世界貿易における中間財の主要な一部である部品及び付属品の米国貿易に占めるアジアの割合が2022年上半期の43%から38%に低下しています。

EU独占禁止規則によりアライアンスの見直しが必須

  次も少々おどろいたNewsでした。それは欧州員会が10月10日、欧州域内におけるコンテナ船社のコンソーシアムに対するEU独占禁止規則の適用外(CBER)を延長しない方針を明らかにしました。これによりCBERは来年、2024年4月25日に失効することになります。

 2022年8月現在のアライアンス・シェアによると次のようです。(日本郵船調査グループ発行の“世界のコンテナ輸送と就航状況 2022年版”参考)

1)アジア/欧州航路  2)アジア/北米航路
No.1Ocean Alliance35.9%No.1Ocean Alliance32.2%
No.22M34.1% No.2The Alliance23.5%
No.3The Alliance23.2%No.32M18.0%

  EUのCBERは市場シェアが30%を一つの目安にしているので、これで行けばアジア/欧州航路ではOcean Allianceと2Mが問題となります。米国でも独禁法で同じような動きがあるので、アジア/北米航路では Ocean Allianceが今後問題になると考えられます。2Mは既に2025年で解散を決めています。提携終了期間はOcean Allianceは2027年、The Allianceは2030年です。2024年4月25日以降はAllianceに対していろいろな制約が出てくることが考えらますので、2M以外のAllianceも早いうちに30%以上のシェアを超えている航路の見直し、Alliance メンバーの組み換えが出てくる可能性、あるいは単独運航会社も出てくることが考えられます。

最新コンテナ船運賃指標

コンテナ船運賃指標(WCI) 10月12日 ※Drewryより参照
航路名ドル/FEU前週比前年比
総合指数1,369-1%-78%
上海/ロッテルダム1,010-2%-50%
上海/ロサンゼルス1,9960%-24%
上海/ニューヨーク2,630-2%-58%

コンテナリース会社は中古コンテナを中国・アジアにO/W、日本返却にも力

 主要コンテナリース会社は現状で95~98%の高い稼働率を維持しているようです。5~8年長期リース契約に対しては、好条件を提示して再延長をお願いしているようです。一方、古いコンテナ、12~15年以上経ったコンテナについては極力高く売れる中国・アジアにO/W(One Way=フォワーダー等に貸し出して実入りで輸送して貰う)、或いは空回送しているとのことです。一方、日本は中古コンテナ重要が高い国ですのでリース会社は言うに及ばず船会社も日本返却に力を入れています。日本の中古自動車の品質の良さが高く評価され日本から中古車、部品と毎月10万台近く輸出されています。その内の数パーセントが主に中古40f Hi-cubeコンテナで輸出にされています。

2023年9月の新造コンテナ情報

 9月の新造コンテナ製造数は230,992 TEU (Dry: 219,089 TEU, Reefer: 11,903 TEU)でした。9月は年間を通して一番荷動きが多い月になります。9月製造本数は前月比13%、27,467 TEU増加(Dry前月比: 18%、32,997 TEU増、Reefer前月比: 32%減)でDry製造増加、Reeferが減少しました。新造コンテナ工場蔵置数は869,072 TEU (Dry: 812,454 TEU, Reefer: 56,618 TEU)。前月から38,748 TEU減(Dry: 4%、30,814減、Reefer: 12%, 7,934 TEU減)となり、新造コンテナ269,740 TEU (Dry: 249,903 TEU, Reefer: 19,837 TEU)が工場から出荷されました。

EFIスタッフが欧州で得た貴重な経験と自信

 4年振りのIntermodal Europe参加はEFIに多くの力と自信をもたらしました。またお会いした多くの人からの大きな期待を強く感じました。EFIのスタッフの力がついてきていることを再認識できた旅でもありました。来年で15年目に入る小さな会社が7名ものスタッフを欧州まで一度に送り出すことは身のほど知らずではないかと非難されるかもしれませんが、伸び盛りの有能なスタッフに貴重な経験をしてもらうなら決して高くはないと考えます。

  一方、日本に帰ってきてほっとするのは自宅のお風呂でゆっくりくつろぐことができることです。首まで熱いお湯に浸かるとゆっくり疲れが取れていきます。それにトイレの温水洗浄便座も貴重です。この快適感を覚えたら手放すことができません。日本式お風呂と温水洗浄便座メーカーの方々に、人間の幸せ、健康のために日本式お風呂と温水洗浄便座を欧州で販売して欲しいと願っています。また世界中にその大きな市場が残されていることを強調したいと思います。

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