コンテナ市況レポート 2010年7月

  • by 中尾 治美

アジアから北米、欧州への荷動きは例年7月から本格的に始まり、9月をピークに下降に向かう。船会社は北米を始め欧州、地中海航路も荷動きが順調なため、7月からのPeak Season Surchargeを導入し運賃回復に努めている。業界誌のShipping Guide(オーシャンコマース社発行)が6月15日の一面で全米小売業協会(NRF)とHacket Associatesが毎月まとめているGlobal Port Trackerをとりあげている。その内容は今年の北米の輸入は10月までは前年同月比2桁増で推移をするとしている。船会社は積極的に1万TEUの船を欧州航路に投入するところも出て来ている。韓進海運が10,000TEU級の5隻の第1船目を7月から欧州航路に、CMA CGMは11,400TEU型の12隻の第3船を7月から欧州航路へ投入する。

リース会社は各社空前の高い稼働率(98%以上?)を記録し、どこを見ても全然在庫が無いという事態を招いている。北米でも欧州でも返却があればリース会社はアジア返却と言う条件で船会社にコンテナを売り込んでいるようである。また、アジアからリースする場合はRound使用のアジア返却の条件とピックアップチャージ及び最低半年、1年間のミニマムデーズの期限付きのリースで出しているのが一般的のようである。リース会社はリース料の安い船会社へのリースを敬遠し、リース料金の安い契約のコンテナの返却を催促し、マスターリース料金のリース料の値上げに努めている。そのため、リース会社は古いコンテナの延命策を講じている。今までは売却に回していたものを多少の修理、特にWear関係を自社費用で直しリースマーケットに出している。その結果各リース会社は今年の収益を歴史はじまって以来の高収益になると予想をしている。

リース会社全社の稼働率が98%以上と言われているにもかかわらず、リース会社は思うようにDryコンテナを発注したくても出来ないために、あるリース会社は船会社からの需要が強い40f Hi-cube Reeferを購入し長期リースを確保している。

中国のコンテナメーカーはもろもろの理由から生産能力の拡大にあまり乗り気では無い。今のところ8月デリバリー20fで、$2,850の高値を記録している。現在までメーカーでの製造コンテナのデリバリーの大きな遅れは聞いていない。 但し、コンテナの部品メーカーがこの需要の強さに応えることが出来ないために、コンテナメーカーはリース会社指定の部品を供給出来ないため、その代替品でのコンテナ製造をリース会社に対して了解を求めている。リース会社もコンテナの発注分のほとんどが長期リースで決まっているため納期が遅れることを恐れてその代替品を受けているのが現状のようである。コンテナの品質も葡萄酒の出来不出来の年と同じで、コンテナメーカーが生産を急いだり、新しい工場を立ち上げたり、今回のように違う部品メーカーからの調達を余儀なくされたりするような状況にあってはコンテナの品質の信頼性はどうしても揺らぎやすい。残念ながらコンテナの品質については今年は不作の年になるかもしれない。

現在の中国でのいくつかの問題は元の切り上げと中国の外資企業、特に台湾、日本、韓国企業での賃上げストの嵐である。中国が09年1月年に導入した最低賃金制度は内陸部からの労働者,農民工の最低限の生活を守るためのものであった。ちなみに中国国家統計局によると09年の農民工の総数は約2億3000万人で08年に比べ1.9%増とのこと。但し、08年9月のリーマンショックで沿岸部へ来ていたかなりの農民工が内陸に戻らざるを得なかったため、労働者の賃金ストは今年の急激な輸出好景気に沿岸部で労働者の不足が引き起こしたものである。一方、中国政府は所得倍増を11年から5カ年計画で導入しようとしている。そのため現在外資企業で起こっている賃上げの嵐は中国政府にとって好都合なのである。 2億3000万人の農民工の所得倍増を外資企業主導により実現に貢献させ、それにより農民工の生活が豊かになり、購買力が増し、内需拡大、中国の輸入増、外貨準備高減少で元の切り上げを最小限度に抑えるシナリオが描けてくる。その中に中国の強かさが見えてくる。

船会社、リース会社からのコンテナの中古市場への出回りは、今年は期待薄となりそうである。特に日本にあっては船会社、リース会社からの返却を待つだけでは中古業社は成り立たないし、国内の需要に応えることは出来ない。そのため外地で売却対象になるコンテナを積極的に確保し、日本に空回送するか、One Wayで船会社に使用してもらって日本に持ち込むような体制が必要であろう。

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