コンテナ市況レポート 2013年9月

  • by 中尾 治美

ブエノスアイレス市で開かれていた国際オリンピック委員会総会で2020年、第32回夏季オリンピックが東京に決まったのを9月8日(日)の朝、読売新聞の東京五輪決定号外で知った。12時間の時差があるので通常の日刊紙では取り上げられていなかった。

我々の仲間でも東京での五輪開催に賛否両論有ったが、小生としては今回の国際オリンピック委員会の東京開催決定に感謝するものである。それはオリンピック誘致が東日本大震災復興の促進、原子力発電所の汚染水漏等の社会問題解決に拍車をかけることは間違いないからである。また日本人の内向き志向の脱却、特に若者に対していい刺激になると考える。海外から日本に来ていただき否応なしに対応を迫られることも内向きからの解放になる。オリンピック開催までの7年間に多くの外国人に日本に足を運んでもらい、ありのままの日本を見てもらえれば世界の人の日本、日本人に対する理解を深めることができる。飾らない日本で良い。あるがままの日本人に接してもらい平和な日本を体験してもらえたらと思う。日本人の思いやりに触れてもらえれば日本は世界に向かって何かを発信していることになる。

世界の観光客渡航先ランキング(2010年)で日本は861万人で30位である。ちなみに1位はフランス7680万人、2位アメリカ5974万人、3位中国5565万人で、勢いのあるお隣の韓国は27位879万人である。今回オリンピックで開催地を争ったスペインは4位、5267万人、トルコは7位、2700万人で日本はこの両国に比べてほとんど世界の人から知られていない。ちなみに日本人の海外旅行客数は2012年1849万人で過去最多であった。世界の人が、この大切なオリンピックという機会を日本、日本人に与えてくれたのだから日本人はそれに応える必要がある。それには日本人が今の生活に満足しないでもっと世界の人と交流を持ち、日本人の心を伝えていけば、必ず世界の人は彼らの心を開いてくれると思う。

欧州経済も底を打ち、米国も着実にその経済の勢いをつけてきている。アベノミクスの第三の矢の成長戦略による所得増、消費増、販売増、生産増の好循環サイクルを期待したい。日本は世界経済の発展に貢献できるように牽引役を積極的に引き受けるべきである。

来年4月に8%、再来年10月10%に予定されている消費税増税。高齢化社会の医療費増加、年金生活者のための増税で日本人が安心して暮らせる社会にするためのものであれば大いに協力したい。一方、現在の1000兆円以上ある国の借金についは政府と国に歳出削減に真剣に取り組んでほしい。好景気になり税収が増え国の借金を減らすことができれば良いが、好景気待ちの無策税収頼み対策は日本をますます窮地に陥らせる。それは1990年のバブル崩壊後の失われた20年間を見れば一目瞭然である。

中国工場にある新造コンテナはまだ80万TEUはあり、リース会社がその7割を占めている。新造価格は$2,100 per 20f 前後である。リース会社の稼働率は90%以上を維持している。大手リース会社は扱うコンテナの多様化を図り投資資金のより良い運用先を探している。Textainerは2008年にReefer Container に参入し、今年、欧州のタンクコンテナのリース専門会社、Trifleetを購入しTank事業にも乗り出した。

ニュ―ヨーク証券取引所に上場しているリース会社、Textainer, TAL, CAI、3社
を見てみると、3社の今年前半のフリート伸び率は前年と比較して10~12%と伸びたが、投資金額は前年と比較して、各社それぞれマイナス35%~44%となっている。ここ数年投資金額は伸び悩んでいる。来年以降は、船会社の大型船投資が落ち着くと船会社自身がコンテナの自社所有に積極的に出てくると予測される。船会社からの長期リース需要が減ると、リース会社は投資先の多様化を早急に図り新たな収益源を確保する必要がある。それでなければリース会社の成長率、収益率は急速に落ち込み大手リース会社は大きな転換期を迎えることになる。またその着地に失敗すると大手リース会社はかなりの古いコンテナを抱えることになり、大量の中古コンテナを中古市場に投入すると、中古コンテナの売却価格の暴落を招く可能性がある。そのためこれからはあらかじめ古いコンテナの販路先を確保していくことが極めて重要になる。

リース会社の本来の役割を取り戻すために、Master Lease市場の再構築を図り船会社に使い勝手のあるMaster Leaseを提供し、Master Lease料金の適正化を図る必要がある。それには船会社の理解が必要である。これも短時間でできることではない。船会社に喜んでもらえるMaster Leaseを提供することにリース会社は知恵を絞ってもらいたい。現在リース会社は安定して利益確保ができる長期リースに偏りすぎて、本来のサービスMaster Lease市場をおろそかにしてきた。これからはMaster Lease市場を再度リース会社の大きな収益源に換える工夫が必要と考える。

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