急速な円安進行の影響は? | コンテナ市況レポート | 2014年10月号

  • by 中尾 治美

10月8日の朝刊一面トップに日本人の科学者3名(赤崎勇・名城大学教授、天野浩・名古屋大学教授、中村修二氏・米カリフォルニア大学教授)がノー ベル物 理学賞受賞の見出しが飛び込んできた。創り出すのが一番難しい青色LEDの発明、実用化によるものである。青色の発明で色の3原色が揃い、白色を始めいろ いろな色が出せようになった。だから青色LEDは画期的な発明なのである。しかも少ない電力でより明るく照らすことをできるようになった。LEDは照明革 命である。

LED照明推進協議会によると住宅用照明で一日5時間点灯、10年間の白熱灯とLEDの電気代比較は85%安くなる。施設、店舗照明で一日10時間 点灯、 10年間の比較はLEDが同じく85%安い。その間LEDのメンテナンス代は0円、白熱灯は家庭用照明で9回、施設、店舗照明で18回取り換えが発生して いる。メンテナンス費用を考えるとコスト削減は計り知れないものがある。今後いろいろな分野での応用が期待できる。

我が家もほとんどの部屋を3年前にLEDに替えた。なぜならその寿命が半端でないからである。その寿命は約40,000時間と言われている。通常の 使用で 10年以上はもつとのこと。我が家も後7年間は替えずに済みそうである。白熱灯は1年に何回か替えたのを覚えている。替え置きが無く不自由したことを思い 出す。

日本全国の交通信号機をLEDに替えると原油換算で年間22.8万KL, 大型タンカー1隻分の原油量が削減できる。全家庭、公共施設、店舗、オフィスビルでLEDが使用されたら大量の原油使用量が削減できる。LEDは世界の街 を低コストで一層明るくし、同時に世界の温暖化に貢献する照明革命と言える。LEDは照明革命だけでなく省エネによるエネルギー革命と言っても過言ではな い。

一方日本経済は急激な円安で深刻である。8月末($1.00=103円)から10月1日($1.00=109円)に6円も値下がりである。10月1 日に一 時的に$1.00=110円を超えた。年末には$1.00=115円の予想すらある。その結果、食料品(コーヒー豆、ワイン、カップヌードル等)の値上げ が11月から目白押しである。その上、天候不順で生鮮野菜の高騰。9月からは厚生年金保険料の保険料率が17.474%となり、給与所得者は給与から 8.737%の天引きである。物価上昇分を除いた実質賃金は今年の8月まで14か月連続で前年実績を下回っている。これでは個人消費は伸びない。そのため 安倍首相に多くの即効のある成長戦略の第3の矢(青色LEDのような)で国民の未来を明るく照らしてほしい。

この円安で本格的に日本の製造業の日本回帰とはならない。日本はコンテナの運用費用が近隣諸国に比べて割高で、船会社、リース会社は日本に在庫を置 かなく なって久しい。今でも船会社は大きな修理が必要な場合は中国に空回送をして、中国で修理をするのが現状である。しかし、円安のおかげで日本の中古コンテナ の輸出が増えてきている。各港で中古コンテナの不足感が出ている。日本の中古車の海外での人気は高い。この円安で海外から注文が増えているのが原因であ る。2013年の輸出実績は116万台であった。2009年リーマンショック以降徐々に回復し、2008年の134万台に迫っている。現在中古自動車の4 割程度がコンテナで輸出されている。

そのため船会社、リース会社にとって日本は古いコンテナを処分するには適している。円安でコンテナの購入価格は上がるのは否めない。それ以上に海外 で中古 日本車の人気が高いこととこの円安が中古車の輸出を後押し日本での中古コンテナの需要は底堅いと考える。コンテナリース会社間の競争が激しく、長期リース レートが低下傾向にある。その結果リース会社も新造コンテナの発注を控えるようになってきている。コンテナメーカーはリース会社コンテナ価格を下げて発注 を促しているのが現状のようである。中国メーカーの新造コンテナの製造価格は$2,000 per 20fまで下がってきている。そのため、船会社は長期リースレートが下がるのを見て、リース比率を上げているようである。中国の新造コンテナの工場在庫は 9月末で、54万teu台を維持している。

明るい話題が少ない現在の日本において、日本人3人のノーベル物理学賞は我々を勇気づけるニュースである。今、難問題に挑戦している研究者に力を与 える事 であろう。若い研究者にも希望を与えるに違いない。発見、発明することは並大抵のことではない。またそれを実用化することも地道な努力が必要である。受賞 者の皆さんが口を揃えて言っているのは“正しいと思うことを信じて続ける”ことである。あることを証明するには一つ一つ実験を重ねていくしか方法はない。 そのためにも強い意志、自信、希望を持って研究にあたることは必要であろう。例えその個人が社会的に報われなかったとしてもその研究は後に続く者に引き継 がれ無駄にはならない。

これはビジネスの世界にも言えることである。長く存続している会社はそれなりの存在意義がある。弊社は来年で6年目に入る。弊社は海外主要会社6社 の日本代理店を引き受けている。マイナス40℃の冷凍能力のあるMagnum Plus を製造するThermo King 社、100年以上の歴史があるTydenBrooks社のSecurity Seal, Future Box社のHybrid Open Top, Sliding Door Container, 未来Hi-Tech社製Chassis等々。良い物は必ず売れるという確信を持ち、いつの日か皆さんに喜んでいただける日を夢見てチャレンジして行きた い。

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