中国における深刻なコンテナ不足の原因は?/ コンテナ市況レポート2016年12月

  • by 中尾 治美

中国でデポコンテナの在庫が払底しているとのこと。その深刻さは、リース会社が売却コンテナを修理してリース用に回すほどである。通常、デポコンテナはマスターリース契約の運用が一般的である。マスターリース契約は、リース料金、返却場所そしてその返却場所での月々の返却本数があらかじめ決められている。また返却場所はDOC(Drop Off Charge)が設定されている。リース会社は、返却場所での再リースの可能性の程度により、そのコストの一部を船会社にDOCという名目でお願いしている。船会社は、そのDOCの金額と自社空回送費用を比較し、リースコンテナを返却するかどうか判断することになる。もちろん、船会社はいろいろなリース会社とマスターリース契約を持っているのでその返却条件も各リース会社によって違ってくる。また、リース会社も船会社毎に、その返却条件が違うため、どこのリース会社のコンテナをどこで返却するのかは各船会社のリース会社に対する返却優先順位によって変わってくる。しかしリース会社は再リースが困難な場所での返却を船会社に止めてもらうためにDOCをできるだけ高めに設定している。

船会社はリース会社のコンテナを単純にDOC、リース料金等の契約内容だけで決めている訳ではない。返却条件も重要であるが、コンテナの需要地である中国、アジアでのコンテナの供給が確保されることが最優先である。船会社はその供給をまず自社の輸入コンテナ、自社コンテナの空回送で賄うが、それが難しいと判断すると現地でのリースコンテナ供給に頼ることになる。リース会社の現地調達が難しいと判断すると、返却地でのリースコンテナの返却を止めて持ち帰り、需要地の供給に充当する。

現在の中国でのコンテナ不足の第一原因は、船会社が自分で必要なコンテナ量を持ち帰りできていないということを意味する。その第一要因は韓進海運の倒産に起因することが考えられる。韓進海運は世界7位のコンテナ船運航規模数97隻を誇り、そのコンテナ運用数50万個以上(80万TEU以上)を常時使用していた。韓進海運倒産時、その運用コンテナが市場に出てくると考えられたので韓進海運倒産について、リース会社はコンテナ需給バランスについて、かなり悲観的であった。しかし実際は韓進海運に貸していたコンテナの回収に時間がかかっているのが現状である。その各リース会社の回収はすでに3ヵ月半になろうとしているが、まだまだ思ったように回収できていないようである。回収するにも保管人に対して、その費用交渉が困難を極めるため、回収時期の見通しが立たない。また、韓進海運とSLB取引をしたリース会社はかなり問題を抱えている。それは韓進海運の色、番号のコンテナを回収地以外に持ち出す場合、韓進海運に債権がある会社にそのコンテナを再度留置される恐れがあるためである。また借りてもその心配があるためなかなか使用してくれない。

韓進海運が運用していた50万本の本数のうちリース会社からの長期リースが約6割(30万本)、残りは韓進海運の自社コンテナをリース会社からSLBとして借りていた約4割(20万本)で、実質韓進海運が使用していた50万本のコンテナが市場から一時消えたことになる。他船社は韓進海運を使用していた荷主からのコンテナ需要が出てくる。船会社が、そのコンテナ需要は一時的と考えるとリース会社から長期リースコンテナの調達は難しい。現在、中国コンテナメーカーの新造コンテナ在庫は、先月と同じ水準の52万TEUを維持している。これからコンテナ需要が落ちる冬場に向かうため、新造コンテナが不足している訳ではない。新造コンテナの需要が伸びない理由は、11月後半から鋼材の値上がりで新造コンテナの価格が上昇に転じているのも要因である。コンテナ価格の値上がりで、ますます長期リースの調達に船会社は躊躇せざるを得ない。

一方、リース会社は現実的にコンテナの値上がりが分かっていても今までのように投機的、大量にコンテナを調達することが難しくなってきている。コンテナリース会社の収益率が下がり、コンテナ調達資金金利上昇を避けることができないためである。悲惨な船会社の収支の現状を見ると、これからのリース会社の早急な収支改善は見込めない。今まで低利投資してくれていた銀行、投資ファンドも消極的にならざるを得ない。今後、コンテナリース会社にとって規模拡大の成長は難しい。

昨年12月に発表された大手コンテナリース会社、TritonとTALの合併のような大手リース会社同士の吸収、合併が今後、現実味を帯びてくる。現状のコンテナ市場では大手リース会社であればあるほどその運用規模を維持、拡大するのは難しいと言わざるを得ないためである。

コンテナの需給バランスにより、現在の中国のデポコンテナのリース料金が値上がりしている。先月、新造コンテナ価格は$1,400 per 20fであったものが今月に入り$1,850 per 20fに値上がりしている。32%の値上がりである。しかし、デポコンテナは船会社が長期リースで使用した8年以上使用された年齢コンテナである。そのデポコンテナのリース料金が上がっているということは中国のデポコンテナの不足がかなり深刻であることを表している。

韓国政府は韓進海運の全97隻のコンテナ船からの荷役完了を11月末終えたことを発表した。韓進海運の破綻により、CKYHEアライアンスのメンバーが韓進海運の船、97隻に積んでいたコンテナ回収にも影響を与えたに違いない。一方、荷主が財務的に脆弱な韓国船社、現代商船離れを起こしていることも否定できない。そのもろもろの要因が現在の中国でのコンテナ不足を招いているということが言えるのではないか?

韓進海運の倒産を受けて、10月末邦船3社は定期船部門の統合を発表。来年7月に新会社設立。再来年、2018年4月に活動開始。運航規模、140万TEU,
世界6位の船会社を目指す。しかし、世界最大の船会社、マースクラインは、12月1日に世界7位のドイツ船社、ハンブルグ・シュドの買収を発表した。これでマースクラインの運航規模は380万TEU規模、業界シェアは15.7%から18.6%となる。世界の船会社の動きは引き続き活発である。

一方、今年1月16日に欧米からの経済制裁解除を受けたイラン国営船社、IRISLが12月始、14,400TEUコンテナ船4隻を発注。2018年第3四半期引き渡しである。2020年まで巨大コンテナ船の発注で60万TEU運航規模拡大を打ち出した。

日本郵船が12月7日に発表した2016年版“世界のコンテナ輸送と就航状況”によると、来年、2017年は209隻、1,517,082TEUの新造コンテナ船が就航し、解撤予想30万TEUを引いても船舶増加率は2016年に比べて40%増えると予想している。そのため2017年も船会社にとって苦難の時代は続く。その新造コンテナ船発注の約80%は船会社以外の投資会社、ファンドによるものである。彼等はコンテナ船会社の将来をどう考えているのだろうか?

来年も船会社、コンテナリース会社、港湾関係会社にとって厳しい年になると思われるが、厳しい年は次の新たな飛躍、成長の芽を孕んでいるものである。その飛躍、成長の芽を見つけ育てることに諦めず挑戦して行きたいと思っている。

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