世界の沖待ちコンテナ船増加による損失 / 運賃急騰が多方面に影響 / コロナ禍で世界経済復活の鍵を握る中国の動向 | コンテナ市況レポート 2021年10月 

    Ocean Network Express(ONE)の情報によると、10月1日現在、北米西岸の沖待ち待機船隻数は、ロスアンゼルス/ロングビーチ港で65隻、シアトル/タコマ港は12隻、バンクーバー港は3隻。北米東岸、サバンナ港は26隻、ニューヨーク港/ニュージャージー港は混雑が悪化中、シャーシー、トラック不足のため内陸主要鉄道ランプの混乱は依然として深刻な状況にあると伝えています。一方、各港の沖待ち日数は、北米西岸、ロスアンゼルス/ロングビーチ港で7~12日、シアトル港が18~21日、バンクーバー港は3~5日、北米東岸、フィラデルフィア港が2~3日、マイアミ港は2日、サバンナ港が6~7日、ヒューストン港で2~4日を要しています。
    中国の港の沖待ち船は米国西岸以上で、9月末時点で上海・寧波で滞船しているコンテナ船は154隻に達しています。中国全土の沖待ちコンテナ船は242隻に上り、混雑状況の悪化は北米西岸を上回ります。また、9月下旬時点で港に入港できず待機中の船舶は、全世界で427隻、9月上旬の376隻から14%も増加。世界中の港湾で物流が止められている現状が明らかです。Shipping Guideが紹介する記事によると、8月の世界のコンテナ船腹量の混雑による沖待ちやスケジュール遅れにより、船腹全体の12.5%・310万TEUが喪失したのと同じ効果があるとしています。その喪失量はCOSCO Shipping (保有船腹量296万TEU)またはCMA-CGM(同305万TEU)のどちらかの船会社が存在しないのと同じ効果であるとしています。
    デンマーク海運調査会社、Sea-Intelligenceは第四半期の北欧州航路の船腹量が前年比16%~17.3%増加するが、総船腹量の12.9%が北欧州諸港の混雑で相殺されると予測しています。
    サプライチェーンの混乱、急騰するコンテナ運賃の回避のために、大手荷主による自社配船の動きが出てきました。Walmart, Target, Home Depot, Amazon, IKEA, Costcoの大手荷主がコンテナ船を用船し、独自に海上輸送に乗り出す動きが活発化しています。米国大手飲料メーカー、Coca-Colaは、ばら積船を用船、自家輸送に乗り出しました。混雑のない港での荷揚げを活用、コンテナターミナルでの高額なデマレージ、ディテンションの支払いを回避することがねらいです。日本の場合も情勢は逼迫しており、コンテナ船社の割り当てスペースは限定的で高額のため、一部のNVOCCが顧客のために自らコンテナ船を用船してスペース確保する動きが広がっています。ジャパントラストは多目的船の一部スペースを押さえ日本発貨物を韓国・中国経由で米ヒューストン向けに毎月輸送する計画です。
    既存の船会社もサービス拡大を始めています。韓国船社、HMMは韓国荷主支援のために多数の臨時便を運航し、北米航路に数十便にのぼる臨時船を運航しています。今年末には単独で南米東岸航路の新サービスの開設を検討しています。台湾船社TSラインズは9月末から10月にかけて、ニュージーランド航路と北米西岸航路でそれぞれ新サービスを開設しました。その一方で、異業種からコンテナ船サービスに参入する企業も出てきました。Alibabaグループの船会社が中国・東南アジア/北米西岸向けに9月末に第一船投入し、グロバルサービス拡大を目指しています。中国のコンテナメーカー、CIMCが中国/北米西岸航路で定期コンテナ船サービスに参入します。コンテナ運賃市況は今後6ヵ月以上高値で推移すると予想されていますが、海運関係者からは長期間の高額用船料を考えるとリスクの高い投資になるという指摘もあります。
    コンテナ船ビジネスに参入する国まで出てきました。タイ政府は来年6月にタイ港湾公社団(PAT)が49%を出資する国営海運会社、“タイ・ナショナル・シッピング”を設立すると発表しました。海運の収入拡大に加え、海外企業への依存を減らし物流コストを下げ、タイの輸出競争力を強化する狙いがあります。

    米労働省が8日発表した9月雇用統計によると、非農業部門の就業者数の増加は19万4,000人で市場予測49万人を下回りました。但し、失業率は4.8%と8月の5.2%から改善し、2020年3月以来初めて5%を下回りました。米国小売業協会(NRF)の6ヶ月予想では9月が前年同月比6.7%増加の225万TEU、10月は0.3%減の221万TEU、11月は2.9%増の216万TEU、12月は0.2%減の210万TEU。2022年1月は前年同月比5.7%増の217万TEU、2月は1.4%増の190万TEUと消費者の購買意欲は旺盛です。

    日本経済新聞が世界の新型コロナウイルス新規感染者数が減少していると報じています。120カ国・地域で減少傾向にあり、欧米で個人消費がもどり、小売、外食産業が勢いづく兆しが出てきています。国際空港の出発便数はコロナ前の2019年10月に比べ、欧州と北米で6割まで回復しているとしています。これもCOVID-19ワクチン集団接種の結果であると考えています。日本の場合も感染率が急激に下がっています。政府が9月30日に発表した接種実績は1回接種した人の割合は総人口の70.0%。2回目の接種を終わった人は59.3%です。接種率は日々上がっています。

    コンテナが世界中で滞留している現状を打開するには、2つの方法しかありません。
一つは、港湾、並びに内陸輸送の作業効率の改善です。しかし、欧米コロナ禍の巣ごもり需要の勢いは眼を見張るものがあります。その中で欧州・北米港湾及び米国国内のトラック・鉄道輸送の劇的改善は期待薄です。それなら中国・アジアからの輸出削減しか方法は残っていません?その解決を中国が出しています。昨年コロナウイルス封じ込めに成功したASEANが、今年になってワクチン接種のおくれでデルタ株の猛威にさらされ、6月中旬以降感染を抑えるため、各国の厳格な行動規制、工場停止、都市封鎖のため経済活動が停滞しています。一方、厳しい統制で、コロナウイルス蔓延防止に成功している中国にASEAN製造業分の負担がかかっています。
    中国政府は気候変動問題に対して世界にコミットメントしています。“2060年までに二酸化炭素の排出量をゼロにする”と。2022年2月4日から北京冬季オリンピック・パラリンピックが始まります。オリ・パラ開催中に開催都市、北京は言うに及ばず、上海のような主要大都市でスモッグの無い、美しい青空、きれいな空気を提供することは中国の真剣度を見せる一番の見せ場です。そのジレンマの中、中国の電力供給の6割以上を占める石炭火力発電所が石炭価格高騰で経営の圧迫をきたし、電力供給事情を悪化させている現状があります。そのため、中国の3分の2の地域で電力供給が制限され、工場の稼働が停止されています。
    中国の国慶節休み前に、中国発のコンテナ運賃が急落しました。北米西岸向け40Fスポット運賃が1万5,000ドルから8,000~9,000ドルに。北米東岸向けが、40Fスポット運賃が2万ドルから1万5,000ドルに下落しました。その要因は電力不足で、製造現場の生産が大きく遅延しています。その影響で船積み予定の貨物が間に合わずキャンセルが続出。その結果、フォワーダーが実荷主向けに販売しているスペースを埋めるために投げ売りしたのが原因とのことです。
国際物流の停滞、半導体不足の中、今後の世界経済、世界のサプライチェーンの復活は中国の手の中にあると言っても過言ではありません。

    9月末の新造価格は、$3,950 per 20fで先月と変わっていません。9月新造コンテナ製造数は 670,402TEU (Dry: 651,070TEU, Reefer: 19,332TEU)。この数字は8月に続いて今年2番目に大きな生産量となりました。9月末の新造コンテナ工場残は477,494TEU (Dry: 375,550TEU, Reefer: 101,944TEU)。先月に比べ11,352TEU増加しています。