【市況レポート】「『TACO』揶揄に反論!トランプ流外交の本質」「スエズ運河復帰の兆し、CMA-CGMが通航再開」他 ~ コンテナ市況レポート 2025年6月

  • by 中尾 治美

「TACO」揶揄に反論!トランプ流外交の本質

 米国金融筋ではトランプ米大統領を揶揄する、“TACO”(Tramp Always Chickens Out)「トランプ大統領はいつも怖じ気づいてやめる。」という造語が使われています。しかし、これは当たっていないと思います。何故なら、トランプ米大統領は、アメリカ国民の利益を最優先に考え、行動するからです。卑近な例が、5月12日に中国と電撃的に相互関税をお互いに110%引き下げて、中国からの輸入関税を30%に引き下げました。トランプ米大統領は、Taxmanと言われるように関税を掛けることで米国を守り、その資金を低所得者減税に使おうとしています。しかし、中国との関税摩擦の長期化は米経済、金融市場に打撃を与え、国民にとり良くないと判断した結果です。勿論、来年の中間選挙にマイナス効果だと考えたと思います。中国も国内景気を高めるために米国の関税緩和は渡りに船であったと思います。

 また、トランプ米大統領は、フォード・モーターが中国のレアアース(希土類)輸出規制により、部品不足で工場を一時停止せざるを得ないような深刻な問題が米国内で発生すると、恥をかき捨て、中国の習近平国家主席に電話をかけ、中国が4月に発動したレアメタル輸出規制に対し、解除・緩和の交渉を6月5日に提案しました。トランプ米大統領は米国経済、国民のことをまず、第一に考えて行動に移します。日本の政治家の皆さんも是非見習ってほしいと思います。

 トランプ米大統領は、交渉相手に対して大言壮語を打ち上げて交渉をリードするのが彼のやり方です。また、交渉を有利に進めるために、決して、相手を悪く言いません。相手が結論を出す前に、自分の気持ちを率直にSNSで伝え、自分の考えに同意するように誘導しています。そして、一番良いところで折り合うのが、彼のビジネス交渉術と言えると思います。相手ととことん話し、自分の理解が足りないと思うと謙虚に改める人です。トランプ米大統領の第一次大統領時代には、当時の首相、安倍晋三さんの話に耳を傾け、その謙虚さがにじみ出ていました。トランプ米大統領の性格、考え方を知れば、最良の対応の仕方も分かると思います。何よりトランプ米大統領は平和を愛し、武力を使う大統領ではありません。

 トランプ米大統領のもう一つ顔は、政府、国際機関の無駄の排除に手を付けたことです。その実行例が、発展途上国に対する経済援助や人道支援を行ってきた米国開発局(USAIDE)の解体です。更には、世界一の富豪であるイーロン・マスク氏をリーダーに、2026年7月4日までの暫定組織である政府効率化省(DOGE)を設立し、大規模な政府職員の削減、支出削減を断行。そして人権侵害を監視する国連人権理事会離脱、世界保健機関(WHO)脱退を宣言、2015年に採択された国際的な気候変動対策であるパリ協定離脱などがあげられます。イスラエルに対する一方的な肩入れはありますが、この機会に各国際機関はその透明性を図り、より生産性の高い組織に変貌することを期待したいと思います。良い悪いは別にして、トランプ米大統領の行動力、決断力、実行力は高く評価したいと思います。

関税ショックで成長鈍化!OECDが世界経済を下方修正

 経済協力開発機構(OECD)が6月3日、世界の成長率を発表しました。トランプ米政権による関税引き上げを受けた貿易や投資の伸び悩みが深刻で、特に米国では成長鈍化とインフレが同時進行する不安定な状況が続くと見ています。3月の発表では関税の影響を一部見込んで世界の成長率の見通しを0.2ポイント引き下げており、2回連続の下方修正となりました。今回は5月中旬時点での関税の水準を反映しており、今後の関税交渉の結果次第で予測は再び修正される可能性があるとしています。

OECDの成長率見通し
20252026
世界2.9% (-0.2)2.9% (-0.1)
米国1.6% (-0.6)1.5% (-0.1)
ユーロ圏1.0% (0.0)1.2% (0.0)
中国4.7% (-0.1)4.3% (-0.1)
日本0.7% (-0.4)0.4% (0.2)
(注)カッコ内は前回3月からの修正幅

 関税が経済に与える影響は米国が一番深刻で、2024年には平均で2%強だった輸入品の関税率は足元で15%と1938年以来の高水準に上昇しました。米国内の物価を押し上げる効果が大きいとしています。関税引き上げによる販売価格上昇で、消費者の購買力は下がり、政策の不確実性で消費や投資への意欲が抑制されるとしています。また米国経済とかかわりの深い国ほど経済の下振れを見込んでいます。

SHIPS法案で混乱必至?船会社に新たな試練

 船会社も例外ではなく、トランプ米大統領のMAGA政策に翻弄されています。

 今年2月に米国通商代表部(USTR)が出した、中国船社の運航船と中国建造船に対する入港手数料に加え、4月30日に米議会に提出されたSHIPS for America Actでは、中国船社以外も中国造船所、関連造船所で建造・修理される船舶をある程度の比率で抱えている場合、USTRの入港手数料以外に、追加課徴金が上乗せされることになります。USTRの入港手数料は10月中旬の発効なので時間的猶予はあります。中国船社をAllianceメンバーとしているOcean Allianceは配船でかなりの負担を強いられることになりそうです。

 一方、SHIPS for America Actと同時に、米国造船業競争力強化のため、中国からの米国輸入貨物の一部に米国建造の米国籍船利用を義務付けるBuilding SHIPS in America Actが米連邦議会に提出されています。荷主にとりかなり複雑なコスト負担が出てきそうです。

スエズ運河に復帰の兆し!CMA-CGMが再開に踏み出す

 世界最大のコンテナ船会社、MSCは4月に業界初の2万4000TEU型の超大型コンテナ船をアフリカ航路に投入しました。同社によると、アジア―西アフリカ間の貿易が急増しているためで、投入することでアフリカの海上物流機能が高まり、輸出入活動を促進させる可能性があるとしています。また、港湾インフラへの投資と開発の促進も期待できるとしています。

 仏海運大手のCMA-CGMが、初めてスエズ運河を運航する主要船社となるようです。第一船が6月28日にスエズ運河を通過し、7月以降に2隻の通航を予定し、徐々に通常運航に戻すとしています。スエズ運河庁も5月13日に純トン数13万トン以上のコンテナ船を対象に5月15日から90日間、通行料を15%引き下げ、スエズ運河の通航再開を後押ししています。

 主要船社に取り、スエズ運河通航は喜望峰周りと比較して運航コストの削減、リードタイムの短縮が図れるため大きな魅力です。しかし、コンテナ船供給量の6~10%程度を喜望峰周りで吸収しているため、スエズ運河航行再開による船舶の入れ替えに数カ月かかり、その間のオペレーション混乱、船舶供給増による運賃競争に直面するため、主要船社も直ぐに飛びつく訳に行かないのが現状のようです。従って、CMA-CGMのスエズ運河通航再開が他船社に与える影響は大きいと言えます。

25年ぶりに自前の船社を!南アがSASCO設立を発表

 南アフリカは6月3日、国営海運会社設立計画を発表しました。名前はSouth African Shipping Company(SASCO)で海運事業を成長産業に位置付け、新たな国営海運会社を目指します。コンテナ船、原油タンカー、ケミカル船、ドライバルカーの4つのセグメントを扱う船会社を目指しています。南アフリカは、1999年に自国コンテナ船社、SafmarineをMaerskに売却し、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中で、唯一、自国船社を持たない国となりました。にもかかわらず、南アフリカは輸出国であるため、外国船社に依存せざるを得ない状況が続き、自国船社の必要性が高まっていました。

運賃上昇?WCI高騰も後半に需給悪化の懸念

コンテナ船運賃指標(WCI) 2025年6月5日 ※Drewryより参照
航路名ドル/FEU前週比前年比
総合指数3,52741%-25%
上海/ロッテルダム2,84532%-53%
上海/ロサンゼルス5,87657%-2%
上海/ニューヨーク7,14639%-1%

 Drewryが6月5日発表したコンテナ船運賃指標WCIは、総合指数が前週比41%増の$3,527 per FEUと高騰し続け、過去4週で約70%近く上昇していると指摘しています。米中間の関税引き下げを受けて、アジア発北米向けのコンテナ荷動きが回復し、同航路の運賃の大幅な上昇が全体を牽引しているとしています。

 しかし、今年後半から需給バランスが再び悪化し、短期運賃が下落すると予想しています。また、トランプ大統領の関税政策に対する米国司法判断の行方と、米国通商代表部(USTR)が提案している中国関連船への入港料措置の影響次第でマーケットは大きく変化するとしています。

コンテナリース業界に寡占の波、TextainerがSeaco統合で世界首位へ

 5月20日に、世界で2番目に大きなコンテナ所有本数、450万TEUの規模を誇るコンテナリース会社Textainer、その親会社である米国インフラ投資会社Stonepeak社が、250万TEUを所有するコンテナリース会社Seacoを、彼らの親会社、Bohai Leasingから買収すると発表しました。これでTextainerは総コンテナ所有本数が700万TEUとなり、先日、三井住友ファイナンス&リースに140万TEUを売却したTritonを抜いて、世界一の規模を誇るコンテナリース会社となります。老舗のコンテナリース会社の一つであるSeacoが業界から消えることで、1970年代初めに起業されたコンテナリース会社の名前が完全に消えてしまいます。また、これで一段とコンテナリース会社の寡占化が進むことになります。願わくは、地域密着型の小規模リース会社、或いは、大手のリース会社と伍していける世界的ネットワークを持った小規模リース会社の成長を期待したいと思います。

2025年5月の新造コンテナ情報~リース需要が再燃か

 5月の新造コンテナ価格は、$1650 per 20fでした。先月と同じです。鋼材、床材及び材料費が5%近く値上がりしているにも関わらず、値段は据え置かれています。コンテナメーカーがその分負担している現状が見えてきます。5月の新造コンテナ生産量は、562,937 TEU(Dry: 529,499 TEU, Reefer: 33,438 TEU)でした。新造コンテナ工場残は, 1,622,664 TEU(Dry: 1,562,293 TEU, Reefer: 60,371 TEU)となりました。全体の工場在庫数は前月から総数+47,915 TEU(Dry: +47,619 TEU, Reefer: +296 TEU)、比率で総数+3%(Dry: 3%, Reefer: +-0)となりました。Dryは増加となり、Reeferは生産分とほぼ同じ数が出荷されたためにあまり変化がありませんでした。月後半から米国向けにかなりの本数が使用されたと考えられます。

 一方、船会社の配船調整による減便後、5月12日、米中関税交渉における電撃的合意により、追加関税が115%引き下げられ、一部の関税が90日間停止されたことで、直後から、中国からの輸出が増え、5月の工場からのコンテナ出荷台数も、今年1月に続いて第2番目に多く出荷されました。船会社は、自前のコンテナを、それを必要とする中国の輸出地に、適時、的確に持ち帰ることが難しくなると、コンテナリース会社の新造コンテナに頼らざるを得なくなるため、今後、コンテナ新造価格は値上がりする可能性が高いと思われます。

議員削減で未来を!国政と産業の再設計

 日本もトランプ米大統領の要望に応えて、マンネリ化した国政を変えることを真剣に考えては如何でしょうか?まず自民党はじめ国会議員の皆様のお金に対する考え方が庶民の考え方とはるかに違っていることです。国会議員は金が掛かると言いますが、地盤、看板、カバンを必要としない選挙を考えれば済むことです。それ以上に、日本の少子化問題が切実になってきましたので、まずは国会議員の数を減らすべきです。これで国民のための資金を捻出し、日本の産業復興を図れば、日本の力を底上げし日本を強くすることになると思います。

EFI×イタリア・クレーン老舗メーカー総代理店

 EFIはこの度、1954年設立のイタリアの老舗重機クレーンメーカー、ITALGRUの日本総代理店を拝命しました。ITALGRUは累計22,000基以上の重機クレーンを世界に輸出しています。その革新的デザインと高品質による無類の競争力に加え、信頼できるサービスを提供することで皆様に喜んでいただければと思っております。Kalmar社製リーチスタッカー、大型フォークリフト、ターミナルトラクターと同様に、ご愛顧をお願い申し上げます。

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