【市況レポート】「コロナ禍で何が?中国コンテナ4社起訴の真相」他~2026年6月

2026.06.11
by 中尾治美

世界に迫る石油・食糧危機!9月末までのタイムリミット

 ホルムズ海峡封鎖の長期化に対して、国連食糧農業機関(FAO)は、世界は今後6~12か月間に深刻な食糧価格危機に直面すると警告しています。特に、中東からの窒素肥料輸入に頼っているアジア・アフリカ・中南米の一部の貧しい国が食糧価格高騰のリスクに直面する可能性を指摘しています。

 国際海運団体、ボルチック海運協議会(BIMCO)によると、事実上3か月間のホルムズ海峡封鎖で、原油タンカーとプロダクトタンカーの輸送量は前年同期比13%減少し、原油供給不足を補うため、世界原油備蓄は記録的な速さで放出されおり、ホルムズ海峡が2027年まで通して封鎖される最悪のシナリオでは、今年9月末までに世界石油備蓄は危機的な水準になると警告しています。

 トランプ米大統領は、イランと早急に合意に至り、米国民が夏場に向かって車で移動する夏休暇のために、国内ガソリン価格をできるだけ早く下げることにより、11月の中間選挙を有利にしたいという思惑があります。もちろん石油販売に依存しているイランも国の経済復興を早めたいと考えているに違いありません。また、ホルムズ海峡早急の再開は、イラン石油に依存している国にとっても死活問題です。ホルムズ海峡再開は、待ったなしの状況にあるのは間違いありません。

コロナ禍の裏で何が?中国コンテナ4社起訴の真相

 5月19日、米司法省が中国大手コンテナ製造会社4社と幹部7名を、シャーマン反トラスト法違反で起訴したというニュースが飛び込んできました。その内容は2019年11月から2024年1月まで、Dryコンテナの製造制限、価格つり上げをしたという疑いとのこと。

 2020年1月中国・武漢市でコロナウイルスの感染拡大が起き、2020年から2021年の間、多くの国がコロナ感染対策に追われました。その間、中国政府はコロナウイルス撲滅のために、感染患者を徹底的に抑え込む“ゼロコロナ政策”をとりました。中国政府は上海都市全域を2022年3月28日から6月1日に解除するまで2ヶ月以上完全都市封鎖(Lockdown)し、2023年1月に“ゼロコロナ政策”の終焉を迎えました。独禁法違反はコロナウイルスのパンデミック時期と重なります。

 米国では2020年3月~5月、各州の商業施設の営業規制、外出禁止による“巣ごもり需要”、2021年半ばからの旅行・外食禁止の反動による家具・家電・衣服等の大量購入”による“リベンジ需要“が起こりました。その結果、2021年夏場に向かって中国から米国西岸、特にロスアンゼルス港、ロングビーチ港に大量の輸入コンテナが集中し、トラック運転手、シャーシ不足で港湾処理能力が機能不全に陥り、2022年1月には100隻を超えるコンテナ船が沖待ち状態となりました。独禁法違反はこの時期とも重なります。

 コンテナ船社は北米を始め全世界から空コンテナの回送が思うようにできず、中国コンテナメーカーの新造コンテナに頼るしかありません。その最悪の状況を救ったのが、コンテナリース会社が投機的に発注していた何百万個という待機コンテナでした。もちろん船会社も注文したと思いますが、コロナ禍下、自社船の調達・運航に加え、世界中を動き回っているコンテナの効率的な運用に大部分の時間をとられ、新造コンテナ発注どころではなかったと思います。

黒幕か、それとも被害者か?価格高騰の真の主因

 実質的に、もし中国のコンテナメーカーの談合が独禁法に触れるのであれば、その第一被害者はコンテナメーカー自身であると言わざるを得ません。それはこの間のコンテナ価格の歴史的高騰の主要因は鋼材価格によるからです。

 コンテナメーカーの肩を持つ訳ではありませんが、中国粗鋼生産メーカーは、世界の粗鋼生産量の50%、10億トン以上を毎年生産しています。中国造船産業と同じで、中国コンテナメーカーは、その粗鋼を使用して海外へ輸出し、外貨を稼ぐために努力している優秀な企業です。そのため、中国4大コンテナメーカーは、北は大連、上海地区及び南は広州の3箇所に各々コンテナ工場を持ち、メーカー同士競い合って注文を取り、自分の生産ラインを埋めるために日夜頑張っています。また、各コンテナメーカーは生産効率を高めるために、新工場建設で最新の建設設備に投資しています。生産ラインの効率化を高めるために2~3交代制に対応するフレキシブル体制が可能です。

 コンテナ価格は2019年11月の $1,620 per 20fから、2021年6月に最高値 $4,000 per 20fを付け、2024年1月には $2,100 per 20fになっています。即ち、$1,620が、約1年半後、最高値($4,000)に達し、その後、緩やかに$2,100に落ちてきたと言えます。最低値と最高値の値差は約2.5倍ありますが、コロナ禍の異常さからしてそのくらいの値幅は特別に高いとも言えないのではないでしょうか?

 船会社、リース会社は各コンテナメーカーとざっくばらんに発注量や他メーカーの値段を出して値引き交渉をしています。同じメーカーでも製造場所が違えば、地の利、或いは、タイミングで値段は変わります。その意味で中国コンテナメーカーはそれなりにフェアプレイヤーであると思います。

 コロナ禍下に於いて、リース会社、船会社はコンテナをコンテナメーカーに発注し、荷主に提供し、サプライチェーンの混乱を収め、最終消費者を満足させたと思います。その結果、コンテナメーカー、リース会社も例外ではありませんが、船会社は2020年から2025年まで歴史的高収益を上げたことは言うまでもありません。

 4大コンテナメーカーは、中国政府の指導で、2017年4月からコンテナに使用する塗料を油性から水性に全面的に切り替え、そのために生産設備を入れ替えて環境規制に率先して対応した実績もあります。

日本も最大12.5%増?米欧の利上げ圧力と中国の深刻な需要不足

 米労働省が6月5日発表した5月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は先月から17万2000人増加、市場予測を大幅に上回りました。失業者は4.3%で先月と同じでした。雇用情勢は安定しています。連邦準備理事会(FRB)は、インフレの高止まりを防ぐために、次の政策変更で利上げの可能性を示唆しています。

 トランプ米大統領は、“国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて発動した相互関税やフェンタニル対策関税について、米連邦最高裁は違憲と判断しました。その代わりとして、2月24日から150日間、1974年通商法122条に基づき全ての国からの輸入品に対して10%の新たな関税を発動しました。これが7月に切れるため、6月2日、米国通商代表部(USTR)は、強制労働による生産品の輸入禁止制度が不十分として日本を含む60ヵ国・地域を対象に、最大12.5%の追加関税を課す案を発表しました。導入の時期は明らかにされていません。

 欧州連合(EU)統計局が6月2日に発表したユーロ圏の5月の消費者物価指数は速報値で前年同月比3.2%上昇しました。中東情勢の混乱でエネルギー価格が高止まりしています。4月の3.0%から上昇し、2023年9月以来の高水準を更新しました。

 中国国家統計局が5月31日発表した5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は好調・不調の境目である50ちょうどでした。前月より0.3%低下し、2か月連続の悪化となりました。景気観が上向きにくいのは需要不足が深刻なためとしています。

6月が需要のピーク?運賃再高騰に備える代替ルートの選択肢

 全米小売業協会(NRF)は4月の小売り関連コンテナ輸入量は205万TEUで、前回予想比で8万TEU下振れ、5月予想は214万TEUで前回予想比3万TEU増、6月は225万TEU前回予想比12万TEU増、7月は219万TEU、前回予想比1万TEU減、8月は212万TEU前回予想から7万TEU減、9月は206万TEUで前回予想から2万TEU減、10月は0.1%増の208万TEUと予想しています。6月が今年のピークとなる見通しです。

 Container Trades Statistics(CTS,英国)が発表した今年4月の世界のコンテナに動き量は1,624万2,000TEUで、前月比4%増、前年同月比1.6%増加でした。1~4月累計は6,385万TEUと好調で、昨年の水準を5%上回りました。第2四半期(4月~6月)に入り、湾岸危機が運賃に即時かつ重大な影響を与えています。世界のコンテナ荷動きは引き続き顕著な回復力を示し、特にサブ・サハラアフリカ地域で顕著で、世界的に最も好調な地域の一つとして浮上しています。1~4月累計の輸出は10%増、輸入は15%増と代替貿易ルートと新興市場が世界の成長を支えていると指摘しています。

 Drewryが6月4日に最新のコンテナ船運賃指標を発表しました。

コンテナ船運賃指標(WCI) 2026年6月4日 ※Drewryより参照
航路名運賃(ドル/FEU)前週比前年比
総合指数3,43323%-3%
上海/ロッテルダム3,57925%26%
上海/ロサンゼルス4,56531%-22%
上海/ニューヨーク5,50520%-23%

 Drewryは今年の繁忙期が例年より早く始まったことが、需要の堅調とスポット運賃の上昇を支えていると見ています。また、船社が6月から北米向け貨物にPeak Season Surcharge (PSS)の導入に成功し、ピークシーズン入りし、季節的な需要が強まる頃から、今後数週間でさらなる運賃上昇圧力が掛かると予想しています。

 Drewryが6月5日に発表したCancelled Sailing Trackerによると,Week24 (6月8日から14日)からWeek28(7月6日から12日)における東西基幹航路の欠便率は5%です。前週から2ポイント低下しました。欠便のうち太平洋航路の東航が49%、アジア~欧州・地中海航路が33%となります。

シェア96%の冷え込み?2026年の新造コンテナ情報

 中国のコンテナ工業協会(CCIA)によると、2025年の中国のコンテナ総生産量は約645万TEUで、2024年から24.4%減少しました。但し、年間生産量は600万TEUを超えたのは、2021年と2024年に次いで過去3回目で、中国は世界のコンテナ生産の96%以上を占めています。2026年のコンテナ生産量は450万~500万TEUを見込んでいます。その要因は、世界貿易成長の不十分さと、紅海での航行再開が不確実、コンテナ需要不足、リース会社、船会社の新規コンテナ発注の緊急性が低下、新造コンテナの需要が抑制されている。コンテナメーカーの受注価格競争が利益率を圧迫し、今後、人件費、塗料、鉄鋼、環境保護コスト上昇が見込まれるため、メーカーとしてデジタル化などを通じて生産効率を向上させ、競争力を高め行く必要があるとしています。

 5月の新造コンテナ価格は$1750 per 20fでした。前月の価格と同じでした。鋼材の値上がりを、床材の値下りカバーし、前月と同じ価格が維持されたようです。

 新造コンテナ製造本数は、590,468 TEU (Dry: 552,329 TEU, Reefer: 38,139 TEU) でした。前月と比較すると、生産本数は+14,991 TEU (Dry: +20,316 TEU, Reefer; -5,325 TEU)で、Dryは増加、Reeferは減少となり典型的なデマンドプル型生産となりました。比率では、生産本数+2.6% (Dry: +3,8%, Reefer: -12.3%)となりました。ホルムズ海峡封鎖の影響もありますが、世界の経済の動きは夏場の需要期に向かって動き出しているといえると思います。5月末新造コンテナ工場在庫数は、1,555,846 TEU (Dry: 1,497,632 TEU, Reefer: 58,214 TEU)となり、4月との比較は、在庫総数+26,831 TEU (Dry: +24,813 TEU, Reefer: +2,018 TEU)で、比率では、総数+1.8% (Dry: 1.7%, Reefer: 3.6%)となりました。5月の工場出荷本数は、563,637 TEU (Dry: 527,516 TEU, Reefer: 36,121 TEU)でした。前月との比較では、出荷数は、総数+52,470 TEU (Dry:+ 56,415 TEU, Reefer: -2,945 TEU)で、比率は、総数+10.3% (Dry: +12%, Reefer: -9.8%)となりました。前月と比較してDryがかなり出たことが覗えます。