【市況レポート】「主要船社8割独占、運賃100%高騰、グローバル物流の歪みと未来」他 ~2026年7月

2026.07.09
by 中尾治美

建国250年の米国、緊迫のイラン情勢とM&Aバブルの行方

 米国は7月4日、建国250周年を迎えました。首都ワシントンで記念式典が行われ、85万発の花火が打ち上げられました。例年の40~50倍の数に達したとのことです。そのスケールの大きさを想像することができません。日本の夏の風物詩である花火大会の隅田川花火大会で約20,000発、日本で一番大きい花火大会、諏訪湖花火大会で約40,000発です。米国が200周年を祝った1976年、私はちょうどNew Yorkに駐在していました。自由の女神からハドソン川に100隻もの帆船が集結すると聞いていましたので、マンハッタンの最南端にあるバッテリーパークに出かけて行き、歴史的瞬間を目のあたりにしたのを思い出します。何万人集まったのか知れませんが、地下鉄を降り港に近づくに従い、大きな歓声が地鳴りのように耳に響いてきたのを思い出します。米国は、上位1%が富の30%を占める格差社会ですが、何か、夢がまだまだ有ると感じる国です。

 ビックリするニュースが飛び込んできました。7月7日、米財務省はイラン産原油や石油化学製品に対する禁輸措置を復活させたと発表しました。イランがホルムズ海峡を通航していた3隻の商船を攻撃したことへの対抗措置と見られます。米中央軍も7日、イランに対して強力な攻撃を始めました。米・イランは6月17日に戦闘終結の覚書に署名した後、6月21日から8月21日までの2か月間制裁を棚上げし、イラン産原油などの輸出入を認めていました。両国は戦闘終結に向けた最終合意を目指して交渉中でしたが、この攻撃の応酬でイラン戦争終結の不透明感が増しています。

 米労働省が7月2日発表した6月の雇用統計によると、非農業部門の就業者数は先月から5万7000人増加しました。5月まで月10万人を超す増加が続いていました。失業率は4.2%となり、前月より0.1ポイント下がりました。失業率は1年振りの低水準となりました。平均時給率は前年同月比3.5%上昇しました。5月の3.4%から拡大しました。米国の消費は全体でみると堅調さを保っています。物価高を加味した5月の実質個人消費支出(PCE)は季節要因をならした前月比で0.3%増加となりました。横ばいに留まった4月を経て5月に再加速しました。まだ強いアメリカがあります。

 ロンドンの証券取引グループ(LSEG)によると、2026年1月~6月期に米国企業を対象としたM&Aは、前年同期比75%増の一兆4467億ドル(約230兆円)でデーターが遡れる2002年以降の上半期として過去最高を更新したとしています。テクノロジー分野が最も多く、今後もAI派遣を巡る競争やトランプ政権の規制緩和によってM&Aが数年間は拡大する見方が多いようです。更にトランプ米大統領に勢いを付けることになりそうです。

 ニューヨーク市は6月25日、賃貸住宅の約4割に当たる100万戸を対象に、10月から1年間、家賃の値上げを禁止する方針を決めました。米不動産サイトによると、2024年ニューヨーク市内のOne Bed Roomの家賃は3350ドル(約54万円)、過去5年間で約2割上昇し、長引くインフレに伴う生活費の高騰により住民の4人に一人は貧困層とみなされています。

死者7000人の衝撃、異常気象で変わるサプライチェーンの未来

 欧州を熱波が襲っています。スペインの保健当局は7月1日、6月の熱波で1000人以上が死亡したと伝えています。フランス公衆衛生庁は猛暑で6月24日以降、死亡者数は約1000人に上ると分析しています。独連邦統計局は、熱波が襲った6月下旬、死者が平時より増加する”超過死亡“で、死者が5000人以上増加したことを明らかにしました。独気象局によると、6月27日までに全国約50の観測所で摂氏40度以上を記録したと報告しています。ドイツやフランスではエアコンの普及率が低く、ドイツで2025年に完成した新築住宅のうち冷房設備を備えているのは約4%と言われています。熱波は物流にも打撃をあたえており、高速道路アウトバーンでは高温により舗装が損傷し、一時的に通行止めや速度制限が生じています。路面電車の線路が熱で変形し運行に支障が出るトラブルも起きています。

 米国海洋大気局(NOAA)が6月11日、続いて世界気象機関(WMO)が7月3日、南米ペルー沖から西の海域にかけて海面水温が高い状況が続くエルニーニョ現象が始まったと正式に宣言しました。1950年まで遡る歴史的記録の中で最大規模のスーパーエルニーニョ現象にランクされる可能性があるとしています。パナマ運河では2023年、水不足の影響で通航制限が発生し大きな影響を受けました。パナマ運河を利用している荷主は、通航制限が発生する場合に備え代替ルートを検討する必要があります。

世界貿易は回復へ、コンテナ指数上昇と紅海ルート再開の兆し

 ドイツのライプニッツ経済研究所(RWI)と海運経済物流研究所(ISL)が発表した5月の世界コンテナ取扱量指数(季節調整済み)は速報値で141.9と前月の141.6(改定値)から0.3ポイント上昇、3月、4月の2か月連続の低下から安定しているとしています。欧州北部諸港のNorth Range Indexは、前月の119.6(改定値)から120.0へ0.4ポイント上昇し、対照的に中国諸港のコンテナ取扱量指数は前月の158.9(改定値)から157.6へ1.3ポイント低下したと報告しています。全体的な傾向としてイラン戦争に起因する原油価格上昇によって世界貿易に生じていた圧力が緩和され、世界貿易は当初予想されていたよりも回復力が有るとしています。

 海事調査会社Sea-Intelligenceは7月2日、国連貿易開発会議(UNCTAD)が公表した2026年第2四半期の港湾定期船サービス連結指数(PLSCI)を分析し、コンテナ船社の積み替えが主要ハブ港での中継から別の地域中継港へ分散する構造変化が進んでいると指摘しています。即ち、主要ハブ港シンガポールでは航路網の縮小が目立ち、インドや中東の港湾が新たな中継拠点として存在感を高めているとしています。

 MaerskとHapag Lloydは、7月6日、Alliance service, Gemini Cooperation を現在の喜望峰経由ルートから紅海・スエズ運河経由ルートに段階的に切り替えると発表しました。乗組員と船舶、並びに、貨物の安全確保が最優先事項で、状況が悪化した場合は、個別の航海やサービス全体を喜望峰経由に戻すとしています。

主要船社8割独占、運賃100%高騰、グローバル物流の歪みと未来

 海事会社、Alphalinerによる6月現在、Top10定航船社、運航Capacity, 運航船数および世界シェアをお伝えします。

Rank船社名運航Capacity(TEU)運航船隻世界シェア(%)
No.1MSC7,453,9451,00221.5%
No.2Maersk4,719,692745 13.8%
No.3CMA CGM4,381,18973312.8%
No.4COSCO3,636,44656210.6%
No.5Hapag Lloyd2,397,3362887.0%
No.6ONE 2,156,7992736.3%
No.7Evergreen2,006,3432415.9%
No.8HMM1,033,593973.0%
No.9Yang Ming757,240992.2%
No.10Zim694,1361152.0%
Total:  29,125,719 TEU 4,155隻85.1%
Top 10 share85%55%
全世界の市場規模34,407,138 TEU7,585 隻

 Top 10主要船社が世界の8割以上を独占している状況にあります。

 イスラエル国防相は、同国の海上安全保障とサプライチェーンに対するリスクがあるとしてHapag LloydによるZim買収に反対する公式声明を発表しました。そのため、Hapag LloydによるZim買収は、規制当局の承認が正式に完了していませんので、別々に記載しています。

注2 MSCは6月10日時点の運航数は1002隻です。世界で初めて運行船数が1,000隻を超えた船会社となりました。

注3 MSCがHapag Lloydへの出資に意欲を持っていることが報じられています。主要株主間の拘束力のある協定が2026年に期限切れになる予定でしたが、2030年まで延長されました。しかし、その後は予断を許さない状況です。

コンテナ船運賃指標(WCI) 2026年7月2日 ※Drewryより参照
航路名運賃(ドル/FEU)前週比前年比
総合指数4,5309%61%
上海/ロッテルダム4,6827%35%
上海/ロサンゼルス6,34910%100%
上海/ニューヨーク7,90211%56%

 輸送能力の逼迫を反映して、今週、太平洋航路で、8隻の欠便が発表されました。船社は引き続き荷動き増加を見越して、7月の一括運賃値上げ(GRI)とPeak Season Surcharge(PSS)を発表しました。Drewryによると、今後数週間はスポット運賃が上昇すると予想しています。東西航路のコンテナ貨物市場は、例年のピークシーズン向けの需要と地政学的混乱による輸送コスト上昇に支えられ、底堅さを保っているとみています。一方、ホルムズ海峡は再開合意がなされましたが、オマーン近郊のコンテナ船が攻撃を受たため、安全保障上のリスクは依然として高まっているのが現状のようです。

中国離れのコンテナ製造、インド・アジアシフトが変える物流網

 Maerskは7月3日、Maerskとインド国営CONCORとの合弁コンテナ製造会社で初めて造られたインド製ISOコンテナの第一号をお披露目しました。同時に追加で1000本のコンテナを発注しました。コンテナの輸出地が中国から東南アジアやインドにシフトしていることに応えたものです。昨年、CMA-CGMが初めてベトナムのコンテナメーカー、ホアファットからISOコンテナ1000本の20fを調達しました。調達先の分散化と、需要地により近い地域でのコンテナの製造・調達はターンアラウンドタイムの短縮、サプライチェーンの効率化を図ることができます。今後、サプライチェーンがインド・アジアにシフトすることにより、コンテナ製造が、益々、中国離れしていくことが予想されます。

ONEがシール使用を義務化、強固な供給網を築くセキュリティ対策

 Ocean Network Express(ONE)の新しいManagementが7月1日よりスタートしました。新CEOにTill Ole Barrelet氏が就任し、元CEO, Jeremy Nixon氏はSenior Adviserとなります。CEOの交代は、2018年4月のONE設立以来、初めてです。4月に7人の代表者で構成された新たなExecutivesが発足し、地域リーダーとともにCEOにレポートする新体制がスターとしました。2030年にコンテナ船運航規模を現行の約220万TEUから、300万TEUに拡大します。ONEの新Managementの活躍に期待したいと思います。

 ONEは6月25日顧客の貨物の安全確保のため、自社が管理するサプライチェーン全域で、国際的なコンプライアンス基準、ISO177122013規格に適合したコンテナシールの使用を義務付けました。弊社が取り扱っているTydenBrooks社製のHigh Security Sealは、全て、この基準・規格に適合しています。特に、Super Bolt Sealは4.5トン以上の剪断力を掛けても切断できないので、米国横断鉄道輸送時の盗難防止用に、多くのお客様からご用命いただいております。ONEも使用しておりますので是非この機会にご使用をご検討ください。

コスト下落も価格据え置き、今年最高の出荷が示す市場の熱量

 6月の新造コンテナ価格は5月と同じ、$1750 per 20fでした。これで3カ月同じ価格となりました。鋼材、床材、塗料も前月に比べて数パーセントはそれぞれ値下がりしています。しかしそれが価格に反映されなかったのは、今後の夏場の需要期を見込んで価格が据え置かれたものと考えます。新造コンテナ製造本数は、665,545 TEU(Dry: 626,855 TEU, Reefer: 38,690 TEU)でした。前月と比較すると、生産本数は+75,077 TEU(Dry: +74,526 TEU, Reefer: +551)でした。比率では、生産本数+12.7%(Dry: +13.5%, Reefer: +1%)となりました。Dry生産に拍車がかかりました。結果としてDryは、今年一番の生産量を記録しました。6月末新造コンテナ工場在庫数は、1,483,248 TEU(Dry: 1,421,188 TEU, Reefer: 62,060 TEU)で、5月末との比較は、総在庫数 -72,598 TEU(Dry: -76,444 TEU, Reefer: +3,846 TEU)で、比率では、総数 -4.7%(Dry: -5.1%, Reefer: +6.6%)となりました。6月の工場出荷本数は、738,143 TEU(Dry: 703,299 TEU, Reefer: 34,844 TEU)で、比率は、総数+31%(Dry: +33%, Reefer: -3.5%)となりました。Dryの出荷は今年一番の記録となりました。出荷の多さが6月の発注増に繋がったといえると思います。

スペインの名門と独占契約、物流品質を維持する断熱サーマルライナー

 この度、我社は創業108年のスペインEMBALEX社から、断熱サーマルコンテナライナー・EMBATUFF(商品名)の日本に於ける独占販売権を賜りました。6月26日、EMBALEX社CEO ホセ・アントニオ・アロンソ氏が来日、MOU(基本合意書)を締結いたしました。EMBALEX社は、1918年創業、産業用梱包資材及び物流分野におけるリーディングカンパニーとして、欧州、北米、南米でその名前と実績が広く認められています。断熱サーマルコンテナライナー・EMBATUFF(商品名)は、商品とコンテナ内部への装着方法について、日本を含む42の国・地域で実用新案を取得しております。一方、EMBATUFFは幅広い商品群があり、お客様のご要望に広くお応えできるFlexibility並びにOriginalityを備えておりますのでその満足度は高いと確信いたします。彼らの優秀な製品を日本のお客様にお届けすることができることを大変嬉しく思っています。